ときどき救急箱の常備薬をチェックして古い薬は処分する
どこの家庭にも目薬、噴霧式の点鼻薬などは常備薬としておいてあるだろうが、うっかり忘れて昔のものをおいていないだろうか。古い薬は原則的に捨てること。
最近、テレビや新聞雑誌で高単位のビタミン剤の宣伝が目立つことに気付いている方も多いだろう。ビタミン剤をオフィスの机の中に入れていて、常用するような人ならとっくにご承知のことだろうが、1988年、厚生省は一般薬のビタミン主薬製剤製造承認基準を改定した。
以来、1日当たりの服用回数や1錠中の配合量の増加が認められた。つまり、製薬業界の人が「高単位型」と呼ぶビタミンが主流になってきたわけである。ハイシーL、などは、従来の2~4倍の高単位型で、若い人に人気があるという。
以前からアメリカでは、ビタミンは食品感覚で売られていた。ビタミン不足を防ぐだけでなく、かぜや頭痛を治すためにも用いられる。日本も、「ビタミン王国」へ1歩近づいたともいえるだろう。
成長期の子供で、やせていて虚弱体質の児童で抵抗力のないものに往々にしてビタミンA 、Dの不足があるといわれる。ことに偏食のはげしい、胸部の骨格の悪い子供にはA、Dの不足がある。それには肝油がよい。マンボウの肝油はこちら。
肝油はタラやオヒョウの肝臓である。日光にあたらない幼児は骨が弱く、O脚やX脚ができやすい。日光にしっかり当たることが大事。
やたらと眠く、倦怠感が強い時にビタミンB1剤を試してみるのもよい。B1は体内でいろいろな生体内反応を助け、特に炭水化物の代謝を助ける。B1が不足すると筋肉や脳の働きが鈍り、がんばりがきかない。
自律神経過敏症の人、とにかく白米食が好きで副食が少ない人、甘い物が好きな人、外食の多い人は疲労感、頭重感が起こることがある。
このような時は、B1の多い小麦や玄米の胚芽を別にとるとよい。
青森地方に「シビガッチャキ」という‰欠乏症がある。舌が赤く腫れ、眼腺縁、口角などが赤くなり、ひび割れ、肛門周辺にも同様の変化を起こす。青森のこの疾患は1955年くらいまでは多かったが、栄養の回復とともに減少している。
これほどB2の欠乏の症状がそろった病気は今日では一般に少なくなったが、慢性胃腸症、抗生物質を長期間使用しなければならないような疾患にはときどき見られることがある。それはB群のうちのニコチン酸を腸内細菌が合成しているからといわれる。
ビタミンB6は酵母中に多量に含まれるビタミンで、肝細胞と神経細胞の働きを活発にし、また脂質代謝を促進させるので、コレステロールが高い時も使用される。皮膚科的には脂漏性湿疹という脂質代謝異常に使用されている。
貧血とは、赤血球が減少して血色素の減少するものであるが、「隠れた国民病」といわれるほどで、特に女性に多い。貧血の原因は多種で一概にはいえないが、顔や爪が蒼白い、倦怠感が強いといった時は、一応、貧血を考えてみる。
たいていは鉄欠乏性貧血といわれるもので、鉄分が減少しているものである。中にはビタミンB12の不足で起こる大赤血球貧血と呼ばれる。赤血球が半分以下になってしまうようなものもある。
貧血の症状があらわれると一朝一夕では回復しないもので、内科の専門医の治療を受けなければならないが、頭が重いとか、動悸がするといった重い症状のないものであれば、食事とビタミンの摂取を心がければ大丈夫。
かつてビタミンCが脚光をあびたのは、しみ、そばかすといわれる顔面の色素沈着に効くといわれるようになったからである。しかし、しみなどにも思ったほどの効果があがっていないなど、多少イメージダウンしたところもあった。
最近は、ビタミンC化粧品「プレミアムEX Cウォーターローション」などの効果に注目が集まっています。
それが、アメリカのノーベル化学賞と平和賞の受賞者、ポーリング博士が著書で大量摂取(50~60mg) をすすめたため、ビタミンCが再認識されてきた。
などの効用を挙げている。
ビタミンCを多く含む食品
ビタミンEは鶏の不妊を治療するビタミンとして発見されたもので、ヒトの不妊にも使用されることがある。また、なかなか妊娠しない、習慣性に流産してしまうなどの場合にはいろいろの原因があるが、その一因としてビタミンEの不足が考えられる。
そのほかに、老化の予防がある。老化は動脈硬化、糖尿病などいろいろの成人病に関係しかさんかししっているが、過酸化脂質と呼ばれている体内の「サビ」によって起こるといわれている。
このサビ止めの役をするのがビタミンEであることが最近いわれだし、ビタミンCと共にブームになっている。ある学者はビタミンEは毎日、100~400mg摂取することをすすめている。
それにはビタミン製剤を利用することになる。ビタミンEを買う時は注意がいる。ビタミンEにはいくつかの種類があるが、人間に有効なのはα-トコフェロールであるからであるから、これの含有量を調べて、多いほうを求めること。
理想的なビタミンEの摂取方法
ビタミンは多種類あるが、これらは相互に密接な関係があって、あるビタミンの欠乏症が起これば、そのビタミン以外のビタミン類の欠乏を起こすことが多い。
たとえばベラグラという、手足が赤くなり、精神障害を起こす病気では、ビタミンB2だけでなく、Bグループ内のニコチン酸アミドが欠乏し、たんばく質代謝に異常をきたす。このようなことから単一のビタミンを内服するより、多種のビタミンを同時に少量ずつ用い、さらにビタミン作用を補助するためにミネラルを添加したもののほうがよく、これらを製剤としたものを総合ビタミン剤という。
ここでは食事とビタミンの関係を説明しょう。現代は「飽食の時代」と言われている。その現代人に、どうしてビタミン不足が起こるのだろうか。私達にビタミン剤が本当に必要なのは一体どういう時なのだろうか。
さて、私達が生命を維持していくのに、たんばく質、脂質、糖質、ミネラルのほかに、「微量でもよいがどうしても必要な栄養素」があることを実験的にはじめて証明したのは、イギリスのポプキンスで、のちに彼はノーベル賞を受けている。ビタミンの命名者は、ポーランド生まれの化学者フンクで、1912年のことである。
ビタミンというドイツ語は、ビタとミンの2つの言葉をつなげたものである。ビタは生命の意をあらわす接頭語、ミンはタンパク分解産物であるアミンをあらわしている。
つまり「生命に必要なアミン」という意味からの命名だったが、のちに必ずしもアミン類ではないことがわかった。ビタミンはカロリー源ではない。
自動車にたとえて説明してみよう。たんばく質、脂質、糖質のいわゆる3大栄養素をガソリンとみると、ビタミンは潤滑油のエンジンオイルで、これが切れると機械はよく働いてくれない。つまり、ビタミンが欠乏すると体内の生理作用のコン小口ールがうまくいかなくなるのである。
もちろん、ガソリンが悪かったり、不足したら、いくらオイルをさしても自動車は走ってくれない。ビタミンは体内ではほとんど合成できない。だから原則的に、食物でとらなくてはならない。ビタミンは食品中に、吸収されやすい天然の状態で含まれている。現在、多くのビタミンが発見され、化学的に合成されるようになった。
各ビタミンの欠乏症や薬理作用や臨床的応用については、あとで説明するとして、どれだけとったらよいか、まず「所要量」から考えてみることにする。
成人の1日の所要量をみると、50mg(VC)とか。100mg(VO)とか実に微量である。mgで所要量のあらわされているものが、水に溶けやすい性質のビタミン「水溶性ビタミン」、IUであらわされているのが、反対に油に溶けやすいビタミン「脂溶性ビタミン」である。ビタミンは、水溶性、脂溶性に大別される。よく注意していただきたいのだが、ビタミンの使い方は、水溶性と脂溶性では異なってくる。
さて、所要量とはなんのことか早く言うと、平均的な最低必要量(目安)のことである。ビタミンCの所要量50mgは、レモンや柿1個分で間に合う。レモン1個、柿1個分程度のビタミンCを摂っていると壊血病にはかからないという意味である。
ところがビタミンはデリケートで、食物から摂る場合、いろいろな問題がでてくる。たとえば、パセリについでビタミンCが多いブロッコリーは、ゆですぎるとほとんどビタミンがゼロになる。
みかんやりんごをミキサーにかけると、ビタミンCはかなり失われてしまう。野菜は、季節により、栽培方法により、ビタミンCの含有量は、食品成分表とは違ってくる。
これはすべてのビタミンに共通していえることである。すべてのビタミンを食事からとることはむずかしい。とくに老人はむずかしい。加えて、バランスのとれた食事をしている人はきわめて少ない。
こうしてみてくると、ビタミンは不足しがちで、ある学者は所要量の2~3倍、つまりビタミンCなら200mgの摂取をすすめているのも一応うなずけるだろう。
この量を「保健量」という。「ビタミンCを1日2~3以上大量投与すると、ガンの予ちゆ防や治癒に効果があり、かぜをひかない」、と主張して、メガ・ビタミン主義を唱えている。もっともアメリカではビタミン剤は薬ではなくて、食物として考えられていて、スーパーで売られているという事情もある。
高単位ビタミンとしては、ビタミンCとEがある。どちらも健康を守る役割をするわけだが、この2つはタイプが異なる。
ビタミンCは、水溶性といって水に溶けて尿中に排出れるので、副作用は一応、心配ない。ビタミE は、脂溶性ビタミンといって、油脂に溶解して水に溶けないのだが、ビタミンEにかぎりとりすぎても体外に出てしまうので、ほとんど心配ないとされている。
過剰に摂取したとしても、余分なものは体外に排泄してしまう水溶性ビタミンには、B1、B2、ナイアシン、B6、パントテン酸、葉酸、B12、C がある。逆に、長期に過剰摂取すると、体脂肪の中に蓄積される脂溶性ビタミンに、A、D、Kがある。
これらのビタミンの特性は、服用すると体内の脂肪分によく溶けるので、体内に蓄積されやすい。
肝油、バター、卵黄、牛乳、緑黄色野菜に多く含まれている。
皮膚や粘膜の上皮の角化の正常化に役立ち、細菌感染に対する抵抗力をつける。ビタミンAは冬になると欠乏しやすいので、ウナギや小魚、牛乳、にんじん、ほうれん草などを意識的に摂ることである。
ビタミンA が欠乏すると夜盲症(とりめ)、皮膚や目の疾患、発育不良症となる。また反対に、大量に摂ると神経過敏、食欲不振、下痢、嘔吐などが小児に起き、慢性的に過剰の時は肝臓の肥大、四肢骨の肥厚などになることもあり、とりすぎに注意したい。妊婦も大量の摂取には注意を要する。
ビタミンAを多く含む食品
ビタミンD は肝油、牛や豚や鶏の肝臓、イワシやカツオなどに多い。ビタミンD は身体にとって、カルシウムの代謝になくてはならないもので、カルシウムやリンの腸からの吸収をよくして子供のくる病の予防や治療、成人の骨軟化症などに使用される。
高齢者は所用量の3倍位を摂るとよい。動物体内にあるデヒドロコレステリンなどが紫外線にあたるとビタミンDに変化する。それゆえ、日光にあたると皮膚中のプロビタミンDからビタミンDができるから欠乏は起こりにくいが、ビルの谷間みたいな所や雪国で生活する人は欠乏しやすい。
ビタミンDのアンチエイジング効果
このビタミンは米や麦の胚芽油、綿実油、紅花油、緑黄色野菜の中に多く含まれている。これがマウスで欠乏すると、雄では睾丸が萎縮して精子ができなくなり、雌では妊娠の維持に障害が起こって胎児が子宮内で育たずに死んでしまう。
こういうことからこのビタミンは抗不妊ビタミンと呼ばれた。ヒトではこの欠乏症ははっきりしていない。しかしこのビタミンは脂肪に強い抗酸化性があるし、末梢血管の拡張性があるので、末輪循環障害のしもやけや最近では老化防止、更年期障害に多用されている。
このビタミンが欠乏すると血液が凝固しにくくなって出血性になりやすい。これは血液の血漿中のプロトロンビンが減少するからである。一般には体姻沖合成されるので特に必要としないが、手術時などでの出血の予防と治療に使用される。骨髄、ほうれん草、にんじんや大根の葉などに含まれている。
ビタミンKの働きと作用
水溶性ビタミンは服用すると水によく溶けるので吸収されやすい。余分にとっても尿中に排泄されるので害はない。
ビタミンB1は米や麦の胚芽油、酵母、豆類、ニンニク、豚肉などに多く含まかつけれている。欠乏すると倦怠、食欲不振、動悸、腱反射の異常等のいわゆる脚気症状となる。
B1欠乏症にBlはもちろん投与されるが、その他、神経痛、筋肉痛、心疾患、腸管障害などの広い範囲の疾病の治療や予防にも使用される。加工食品、インスタント食品ばかりとっていると、B1が当然、欠乏する。激しいスポーツをする人も欠乏する。
イライラして心身が落ち着かないときはビタミンB1
ビタミンB2 は牛乳、肝臓、オートミール、アーモンド等に多く存在し、化学名をリボフラビンという黄色の結晶で光に弱い。ビタミンB2が欠乏すると口唇や口角に炎症を起こしたり、角膜周囲の充血等の症状がみられる。以前東北地方でいわれた「シビガッチャキ」はビタミンB2の欠乏症である。B2はこれらの症状の治療または予防に使用される。このビタミンの服用により尿は黄色となる。
ナイアシン(ニコチン酸)体内のエネルギー代謝に必要なこのビタミンは、タバコのニコチンと違って毒性がなく、酵母、牛や豚の肝臓、豆類、ごまなどに多く含まれている。ニコチン酸はベラグラの予防因子として発見された。
西・中央アジアの砂漠地方でトウモロコシを常食とする地方に、皮膚が日靡けあとのように黒ずみ、皮がむける、口内炎も併発する、こういう症状が多くみられた。同様の症状はアルコール常習者にも出ることがある。
B6は酵母、肝臓、豚肉、鮭、トマト、とうもろこし、キャベツ、じやが芋、はちみつなどに多い。このビタミンの化学名は、ビリドキシンという。
マウスにビタミンB8が欠乏するとけいれんや皮膚炎が起こってくる。ヒトでの欠乏症としては皮膚炎、口内炎、口唇炎、舌炎、神経炎、湿疹、貧血などが起こる。特にアレルギーの体質、大酒家では欠乏し易い。
ビタミンB6が多く含まれる食品
母や肝臓、牛乳、大豆類などに多い。マウスではパントテン酸の欠乏は発育が止まり、毛の色素沈着に障害が起こり白毛となったり、副腎に障害がみられる。
パントテン酸は広い意味で代謝に関与し、欠乏症としては人間の生命線である副腎機能の減退により性ホルモンのバランスが崩れ、神経障害のもととなる。
皮膚炎、栄養障害、肝疾患などに臨床的に応用されているが副作用はほとんどみられない。
葉酸は、ほうれん草や肝臓に含まれるビタミンで、核酸の代謝や生成に関与している。不足すると貧血や出血を起こしやすい。
このビタミンはコバルトを含む赤色のビタミンでコバラミンといわれ、肝臓に多く含まれている。チーズ、牛乳にも含まれている。これが不足すると悪性貧血、倦怠、胃腸障害、眼精疲労の症状が起きる。B12はストレプトマイシンやオーレオマイシンの培養液から抽出して作られている。副作用はない。
ビタミンCは体内の細胞維持やコラーゲンの合成、血管強化作用、色素沈着防止、解毒作用がある。また、壊血病、紫斑病、毛細管出血、口内炎、歯肉炎、皮膚の色素沈着、そばかす、熱性炎症疾患等にと用途が広い。
このビタミンは化学名をL-アスコルビン酸といい、新鮮な野菜、果物、パセリ、ブロッコリー、芽キャベツなどに多く含まれており、酸味が強い。さつま芋はとくにビタミンCの宝庫である。りんごや桃、ぶどうよりもはるかに多く、熱を加えてもほとんどビタミン含有量はかわらない。
ドリンク剤がブームである。ドリンク剤(製薬業界では、100ml未満の容量のものを、ミニドリンク剤と呼ぶ)は、平成3年の調べでは1年間1900億円も売れたといわれている。
手軽にビタミンを摂取できるからだろう。しかし、これは身体が必要としているのか、ファッション性からの必要か疑わしい。ところでビタミンを、栄養を含んだ食物をとるのと同じような感覚で必要以上に服用しているとビタミン過剰症になり、ちょうど欠乏症と同じ怖い副作用がでてしまうこともあるのをご存じだろうか。
このドリンク剤には、2通りのものが市販されていることを、まず知っておいていただきまたビタミンをたくさん摂っているから安心と、食生活をないがしろにしていないだろうか。そういうことも考えて飲んでほしいものである。
ひとつは、一般用医薬品として厳重な規格のあるドリンク剤で、たとえばリポビタンDやアリナミンVなど、薬局・薬店で売っているものである。
もう1つは、たとえばオロナミンCや鉄骨飲料のように、駅の売店や自動販売機で売っている清涼飲料(機能性飲料)である。
清涼飲料水とは、乳酸菌飲料、乳および乳製品をのぞくアルコール分1%未満の炭酸飲料のことであり、要するに薬ではない。成分は食物繊維、オリゴ糖、カルシウムなどとされているが、薬ではないので、薬効は表示できない。
それに対して用法、使用上の注意、成分などが明記されている医薬品のドリンク剤のように、滋養強壮、疲労回復、体力増強を期待して服用される薬が保健薬である。
保健薬の主剤となるものはもちろん各種のビタミン剤であるが、さらに必須アミノ酸、ミネラル、機能性食品などが加えられている場合もある。強精効果を発挿させる場合に人参、ローヤルゼリー、マムシ、鹿茸、イカリ草エキス、その他漢方エキスの入ったものもある。
ドリンク剤(医薬品、清涼飲料水に関係なく) は、普通は1日大人1本程度が望ましいだろう。これを食事代わりに飲用するなど、論外である。自分の目的にあったものを飲んでいただきたい。
スポーツや時間外勤務が続いてクタクタに疲れた肉体疲労時には、総合ビタミン剤がよい。精神的緊張が続いて疲れが強い時には、ビタミンC 、ビタミンEの主剤となったものがすすめられる。
読書とかパソコンの入力作業が長時間続き、眼がかすみ、肩がコリ、手足のしびれた時には、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12などが多く含まれたドリンク剤がよい。
妊産婦の方にはカルシウム、鉄分を含んだものがよいが多くは、カプセル剤となる。
狭心症の発作(胸痛)にはニトログリセリン錠、ニトロール、ニトロールスプレーなどの即効性冠拡張剤がよく効く。狭心症の患者はこれをつねに携帯しておき、胸痛の予感があった場合に早目に服用する。
服用後は2分くらいで効果があらわれ、30分程効果は持続する。ニトログリセリン錠は古くなると効かなくなる。舌の上にのせてビリビリするならば有効である。
起床時、あるいは出勤途中で胸痛発作を起こす場合には、起床30分く2時間前に亜硝酸系薬剤(ニトログリセリンなど)の貼付あるいは徐放剤を服用する。
夜間睡眠中に、あるいは早朝に胸痛発作の起こる異型狭心症の場合には、就寝前にカルシウム括抗剤を服用して冠動脈の緊張を低下させておくと胸痛の予防ができる。安静時にも労作時にも、胸痛発作のある場合には、更にβ遮断薬と冠動脈拡張薬を加えベータ多剤併用療法を行っている。β遮断薬は心拍数を減少、心筋代謝抑制、酸素消費量減少の作用がある。β遮断薬には、副作用が少なくて効果を発揮する新しい製剤が開発されている。
心筋梗塞を起こした場合にはモルヒネを使用する。同じ心臓の病気でも、狭心症の場合に用いる亜硝酸系の薬剤は効きめが弱い。
血液の血栓形成を防止するための抗凝固剤には、ワーフアリンが用いられる。心筋梗塞は多くの場合血栓形成があって、心臓の一部分の血液の流れ(冠血流)が阻止されている。
この血栓を溶解すれば血流は再開する。これは血栓溶解療法と呼ばれている。梗塞発症の初期に実施するのが、早ければ早いほど、再開通率は良くなる。
心臓を環流する冠動脈の流れがわるくなり胸痛が続く、あるいはだんだんと胸痛発作の回数が多くなって憎悪傾向にある場合には、動脈ー冠動脈バイパス手術の行われる場合もある。動脈硬化と血栓形成で狭容した領域をバイパスしてその末棺動脈に、内胸動脈、あるいは胃動脈を吻合して血流を再開する手術である。
最近ではバイパス手術の代わりに、形成術を受ける人が増えている。狭窄部にバルーンカテーテルを送りこんで機械的に拡張するのである。経皮的冠動脈形成術と呼ばれている。
死因統計を見ると、昭和56年以降、第1位の座はガンによって占められており、ガンによる死亡数ならびに死亡率は確実に増えている。死亡数は平成元年には21万人、平成4年23万2千人、平成5年23万7千人であり、このところガンによる死亡数は一年間に平均的5千人の割合で増加している。
正常な細胞が狂暴なガン細胞に変身する原因としては、「ガン遺伝子」の活性化が挙げられている。もともとこのガン遺伝子は、普通の正常な細胞の染色体の中に組みこまれているのであるが、正常の場合はガン抑制遺伝子によってその活性化が抑えられている。
ところがなにかの原因によって、このガン遺伝子とガン抑制遺伝子のバランスが崩壊すると、ガン細がんか胞が発生することになる。細胞の癌化である。このバランスの崩壊を促進する因子としては、放射線、紫外線、ある種のウィルス、または直接的に、あるいは間接的に遺伝子を傷害する物質が挙げられている。
最後に挙げた損害物質は、消化器、呼吸器、皮膚を通って侵入してくる場合と、身体の中でで生成される場合とがある。しかしそれ以外に、一生を通じて内部環境に影響を与える「生活習慣」(ライフスタイル)を見逃すことはできない。
この生活習慣と遺伝子の傷害については、大阪大学医学部の森本兼嚢教授(環境医学)によって、染色体色分け技術を指標とした「森本の8つの健康習慣」が報告されている。
正常な細胞がガン細胞に変身する原因は、発ガン遺伝子の活性化である。したがって、その予防法は遺伝子傷害因子を遮断あるいは除去することである。国立がんセンター総長杉村隆先生の勧める「ガン予防12力条」を実行されている方は多いと思われるが、それに加えて前述の「森本の8つの健康習慣」を考慮すると次のような予防法が勧められる。
生活習慣からガンを予防する
以上「健康14か条」。
睡眠時間は7時間以上はとても重要です。
胃ガンで亡くなる人が減ったのは、早期発見による手術症例が多くなったためだけではない。胃ガンそのものが男女ともに減っているのである。このような胃ガン羅患率の減少は、食生活を中心とした生活習慣(ライフスタイル)の変化によるものと考えられる。
心配な人は前述のガン予防法を実行していただきたい。胃ガンの初期には自覚症状はほとんどないため、年1回の健康診断が必要となる。自覚症状の訴えが出た時点では、胃ガンの病期は相当に進行していて、手術の効果は期待できない場合が多い。
胃ガンを早期発見するための検査には2つある。X線造影検査と内視鏡検査である。
水に溶かしたバリウムを飲んで胃の内部を観察するX線検査は、人間ドックで行なわれている一般的な検査である。ここでなにか異常な粘膜の変化をとらえた場合には、胃内視鏡悪査を受けることになる。
胃ガンの治療は、基本的には手術してガン細胞を全部取り除くことになる。この場合、胃を全部切り取る全摘手術と、胃の一部を切除する部分切除に分かれる。
このどちらの手術方法かは、ガンの存在している部位とガンの広がり具合によって決められる。また最近では、胃内祝焉組織切除法によるガン病変部の除去が行われている。これは非常に初期の胃ガンに適用される切除法で、外来通院で手術は終わり患者にとっては楽である。ピロリ菌の最新除去方法「マヌカハニー」の使用感と口コミ
肺ガンの元凶として喫煙の害が指摘されるようになって久しい。タバコの煙の中のタール成分には多くの発ガン物質が含まれていて、細胞をガン化させるイニシエーターもプロモーターも十分量含まれている。
代表的な発ガン物質はベンツピレンとニトロソ化合物であるが、これらの物質が気管支の粘膜ならびに肺の細胞に入りこんで遺伝子を侵害することになり、肺ガンとなる。
プリックマン指数という言葉を耳にした方は、喫煙者の中では多いと思われる。1日吸うタバコの本数に喫煙年数を掛けた数値のことで、この指数の高い人ほど発ガンの危険性は高くなる。毎日20本のタバコを20年間吸い続けた場合には、ブリックマン指数は四400となる。400を超えると発ガンの危険域に入ったと考えられる。
肺ガンの自覚症状で多いものは血痰と咳。かぜをひいて咳の止まらない場合とか、痰に血液の混入してくる場合には、ためらわずに呼吸器科を受診すること。
早期の肺ガンが発見される場合がよくある。肺ガンの早期発見には痰の中の細胞を顕微鏡検査してガン細胞を見つけ出す方法がある。今の方法は、胸部X線写真を撮ることである。この噂疾検査と胸部X線写真を定期的に受けることが、肺ガンの早期発見に役立つ。
近親者に肺ガンの病歴のあるの人は、年に2二回の定期検査を受けることをお勧めする。肺ガンのタイプには、偏平上皮ガンがもっとも多く40% を占めている。肺の扁平上皮ガン治療による口内炎、しびれが結晶ゲルマで治まった
これは肺の入口の肺門と大きな気管支の粘膜にできてくるので、胸部X線写真で早期発見するのはむずかしい。ただし悲観することはない。このガン細胞は脱落して痰の中に混入されているので、喀痰細胞診を受ければ早期発見が可能となる。
次に多い肺ガンは腺ガンで、肺ガンの40% 近い羅患率であり、女性に多い。喫煙の影響は少ないといわれている。幸いなことに肺門部から離れた肺野に出てくるので、胸部X線写真で早期発見が可能である。
逆に喀痰検査で発見するのはむずかしい。
3番目に多い肺ガンは、小細胞ガンで全肺ガンの15%を占めている。肺門部に発生することが多く、しかも気管支粘膜の下に隠れて発生するので、胸部X 線写真でも喀痰細胞診でも、早期発見はむずかしい。
転移を早期に起こすたちの悪いガンである。タバコをやめて予防することが肝要である。肺ガンの治療は第一に手術である。手術後の5年生存率は向上してきている。手術の不可能な場合には、抗ガン剤の投与が行なわれている。しかし、抗ガン剤にも耐性がでてきて、はじめは有効であっても投与期間が長くなると無効となって副作用が前面にでてくる。
脂肪と肉の摂取が多くなると、大便の量が減少して大腸に停滞する時間が長くなり、大便の中に含まれている発ガン物質も濃縮される。大腸粘膜の細胞は、濃縮された発ガン物質に長時間侵害されるので、ガンになり易い環境におかれたことになる。
大便の中にある発ガン物質は、食品そのものにもともと含まれている場合もあるが、胃・小腸・大腸と通過する間に、発ガン物質の合成されることもある。
大腸の常在細菌の嫌気性菌と、脂肪によって排出される胆汁が混合すると、発ガン物質を生成するともいわれている。このところ和食が見直されている。
もともと日本人の食事は、戦前は米と麦が主食であり、副食のおかずは野菜と魚で調理されたものが多く、脂肪と肉類は少なかった。したがって大便の量は食物繊維が多いので大量となり、発ガン物質に対する希釈効果を発拝するとともに、大腸の蠕動運動動も旺盛となり、大便は早く排泄された。これが大腸ガンの患者が少なかった理由とされている。
ただし、日本型食事の欠点は、塩分の多いことで、食塩の量をぐんと少なくした和食がパーフェクトです。大腸ガンの自覚症状は、血便、便柱細少化、残便感、便秘と下痢の繰り返し、などである。以上のような症状の続いている方は、消化器科を受診していただきたい。
大腸ガンの早期発見には、免疫学的便潜血検査を一年間に数回受けることである。肉眼ではそれと認めることのできない微量のヒトヘモグロビンを検出できるので、前日の食事の制限はない。この検査で陽性となった人は、X線注腸検査とか大腸内視鏡検査を受けて、病変の有無を確認する。特に大腸ガンのリスクファクターのある方は、定期的に検査を受けることをお勧めする。
近親者に大腸ガンや直腸ガン、ポリープを発見されて手術したことのある場合には、あなたがガンになる危険率(リスクファクター)は高くなる。大腸ガンは、切除することが治療の基本である。切除といっても、内視鏡を肛門より挿入して、ポリープ状に隆起した病変部を電気的に焼き切ってしまう内視鏡的切除と開腹手術による切除の場合がある。
抗ガン剤と放射線療法の行なわれる場合もあるが、手術後に再発防止のために行なわれている程度であって、治療の主流とはなっていない。
自宅で検査する大腸検査キットもあるので不安な人にはおすすめ!
乳ガンの治療も、手術による病変部の切除が主流となっている。従来行なわれてきた手術は、皮膚と筋肉(大胸筋、小胸筋)を含めて乳房全部を切除するハルステッド手術が多かった。
最近は縮小手術が増えており治癒率もよくなってきた。これは女性のシンボルである乳房をなるべく温存して術後の「QOL」に配慮した結一果であるといえよう。
さらに新しい手術としては、乳房温存療法が行なわれる場合もある。ただし、限局した小さなガンであり、周囲のリンパ節へ移転してないという厳しい条件がつけられている。
この手術が適当であるかどうかを診断することは、非常にむずかしいようである。乳ガンの早期発見には、前述のリスクファクターを参考に定期的に検査を受けることをお勧めしたが、自己検診も早期発見に有効である。
生理が終わって1週間以内であれば、女性ホルモンの関係で乳腺が縮少した状態になっているので、シコリがあれば触診で発見し易い。要領は人差し指と中指で乳房をなでるようにしてまんぺんなく触わる。
コリコリした硬いものを感じたら医師に診てもらうことである。乳首の陥没、ひきつれ、えくぼの発生にも注意する。乳首の異常な分泌物やただれ、皮膚の発赤にも気をつけたい。
30歳を過ぎたら、恥ずかしがらずに、年に1回この検査を受けておきたい。子宮体ガンの患者数は増加している。体ガンに罹患する人は、45歳以上の人で、生活習慣(ライフスタイル)の欧米化と関係があるように思われるがはっきりとはしていない。
自覚症状としては不正出血で、この点が出血と関係のない子宮頸ガンと異なる。閉経後に出血のある人、月経とは思われない出血のある人は、不正出血である。
性交後の出血も要注意である。以上の症状のある方は、必ず婦人科での検査を受けていただきたい。子宮体ガンの検査は、子宮頸部を通って奥のほうに、棒状の器具を挿入して細胞を採取し、顕微鏡で検査を行う。初期の子宮頸ガンの手術には、その部分だけを切除したりレーザーで焼いたりして治す。
ウィルスが原因となってガンが発生する病気には、成人T細胞白血病がある。この白血病は日本南西地方の一部に発生する傾向があり、最近注目されている。
原因ウィルスはHTVL-1である。このウィルスの感染経路には母乳による母子感染、輸血、男女間感染の3つがある。
B型肝炎ウィルスで起こる慢性肝炎には、肝硬変、さらに肝ガンヘと進展する場合もあるが、C型肝炎に比較すると少ない。B型肝炎にかかりたくない人には、HBワクチン接種をおすすめする。
近親者にB 型肝炎ウイルス陽性者(HBVキャリア) のいる場合や医療従事者、HBV濃厚汚染地域への旅行・予定者は、是非ともこの予防接種を受けておいていただきたい。
B型肝炎の原因であるウィルスを完全に無毒化できる抗ウィルス剤は、現在のところない。最近では抗ウィルス薬のインターフェロン筋肉注射が有効でHB Vの消失を認める報告もある(10%以下)。
薬局で一般用医薬品として自由に買うことのできるB型肝炎の薬には、小柴胡湯(しょうさいことう)がある。副作用が出ることがあるので、添付文書をよく読んでいただきたい。C型肝炎もウィルス(HCV) によって起こり、B型肝炎と同じような経路で感染する。感染経路は、輸血、性交、汚染された血液、体液との接触、母子感染などである。C 塑肝炎はたちが悪く、慢性肝炎、肝硬変、肝ガンへと進行する頻度はB型よりぐんと高い。
しかし幸いなことに、C型肝炎にはインターフェロンの筋肉注射が有効な場合があり、完治例も報告されている。エイズはウィルス病の一種で、感染すると白血球の一種であるT細胞が障害されて免疫不全の状態となり、死に至る病気である。
T細胞が特異的にやられるという意味で、成人T細胞白血病に似ている。エイズに対する特効薬はない。原因ウィルスはHIVである。感染経路は、性交(同性、異性間)、血液並びに血液製剤の注射、不潔な注射などである。常日頃より、他人の血液、体液に触れないように注意していれば感染予防は可能である。
私たちの身体に発生してくるガンのうちで、喫煙と関係のうすいガンは前立腺ガンと白血病ぐらいのもので、ほとんどのガンは喫煙と関係があるといわれている。
タバコの煙の中には多くの発ガン物質が含まれている。この発ガン物質が、気道粘膜、肺、口腔、食道、胃、腸の粘膜に直接ふれることになり、一部の発ガン物質は吸収されて全身を汚染することにもなる。
非喫煙者にくらべて喫煙者にガン発生頻度が高いことは当然の結果といえよう。喫煙ともっとも関係の深いガンは喉頭ガンで、その95%は喫煙によって起こるとされている。
次に喫煙に関係の深いのは肺ガンで、その70% は喫煙により、残りの30% は大気汚染あるいは職業などに関係しているといわれている。そのほか消化器系のガン(口腔、咽けい頭、食道、胃、肝臓、膵臓)、膀胱ガン、子宮頸ガンなども喫煙者に多い。
タバコを喫わない人も安心はできない。周囲の人が室内の空気をタバコの煙で汚染すると受動喫煙(間接喫煙 となる。嫌煙権はもっと論議されてよいと思われるが、ほとんどの職場ではタバコを喫いながらの勤務が公然と行われている現状である。
家庭内での受動喫煙を例にとると、父親1人が喫煙者である場合には、25年経過するとその子供の肺ガン罹患危険率は2倍になるとした報告がある。
「禁煙してもあまり効果がないのでは」と疑り深い人がいるけれども、5年間禁煙を続けるとガンにかかる危険性は半減する。10年間禁煙すると非喫煙者とほとんど同じ状態になる。禁煙の効果は、ガンを予防するだけではない。タバコをやめると心筋梗塞、脳卒中の罹患率も急速に低下して、5年禁煙を続けると非喫煙者と同じレベルに回復する。
ガンの予防には、のビタミンC大量投与説が有名だが、まだ確実に実証されてはいない。ただ、いろいろな報告をもとにまとめてみると、ビタミンA 、C 、E 、βカロチンについてはガン予防効果があるように思われる。
ビタミンA の過剰摂取は避けなくてはならないが、ビタミンC 、E 、βカロチンについては、取り過ぎの心配はほとんど考慮しなくてよい。動物性脂肪は乳ガン、大腸ガンの発生頻度が高くなるので、高脂血症の予防も含めて摂取量を少なめにすることを心がける。
食物繊維はコレステロールの吸収を悪くするといわれており、また大腸ガンの予防に有用であり、便秘にも効果がある。緑黄色野菜を1日に300g以上とるようにつとめる。
熱い食べ物、飲み物をフーフーと吹いて食べたり飲んだりしている人がよくいるが、これも粘膜を傷害してよくない。保存食品や、煉製品、瓶詰、缶詰類の食品は連用を避ける。
なるべく新鮮な魚、肉類、野菜を調理して食べるように心がけていただきたい。これは食品全体にいえることであるが、熱を加えすぎると、タール成分ができるので、この中に含まれている発ガン物質が細胞を傷害する。長い間保存すると、変性とカビによる発ガン物質の生成が問題となる。同じ食品を常に食べるのも感心しない。特にワラビとかふきのとうを連用するのは避ける。お米屋さんも時どき変えるとか、食品の種類は1日に30種類以上を食べるように、それも毎日調理を工夫し、味付けなども変化させるように努力したい。
糖尿病による死亡率は年ごとに増えており、三大成人病についで問題となっている。国内では約200万人以上の糖尿病患者がいると推定されている。しかもそのほとんどの人が、自分では糖尿病を自覚していない状態にある。
糖尿病は膵臓より分泌されるインスリンの量が不足して起こる糖質を中心とした代謝異常状態で、遺伝的素因に関係の深い病気である。インスリン不足のために血液中のブドウ糖濃度(血糖値)は上昇し、尿の中にまでブドウ糖が認められることになる(尿糖陽性)。
糖尿病の自覚症状は、初期の段階では認められない。中等度以上に進展すると、多食、多飲、多尿、口のかわき、疲れやすい、などの症状が出てくる。したがって、治療のもっとも有効な早期糖尿病を自覚症状から発見することは不可能で、血糖値の測定、尿糖の検査が早期発見の決め手である。
糖尿病を放置すると、糖尿病性昏睡を起こすことがある。これは血中にケトン体が増加して血液が酸性(アシドーシス)となって、pHは7.25以下となるもので、適切な治療が加えられないと死に至る。
血管障害が一番問題である。糖尿病の血管障害は大血管にも微小血管にも起こり、動脈硬化症を認めることになる。心筋梗塞、狭心症、脳出血、脳梗塞、下肢の壊痘、糖尿病性腎症、網膜症が進展し、治療しても、元の状態には戻らないことが多い。
神経障害は中枢神経、末棉神経、自律神経の三者にあらわれるが、問題となる障害は末梢神経と自律神経の障害である。末梢神経障害は下肢に両側性に起こることが多く、対称的な痛みや、感覚異常を訴える。
筋肉の萎縮を認めることもある。自律神経障害としては性欲減退、起立性低血圧、膀胱障害、発汗低下、消化器障害、関節障害などがある。糖尿病患者には感染症が起こりやすい。特に肺炎、尿路感染症が問題となり、抗生物質の効きが悪いので感染が長びくことがある。下肢に生じた壊痕が難治性となることはよく知られていることである。
糖尿病の合併症について詳しく。
糖尿病の治療は、もともと不足しているインスリンを極力節約することであり、どうしても足りない場合にはインスリンを注射することになる。治療法は、食事療法、運動療法、薬物療法の3つに分かれる。中でも食事療法は最も大切で、インスリンを節約するための基本療法である。食餌療法は次の2項目が基本となる。
総カロリーの決定と標準体重の決め方は、以下のとおり。
<総カロリー=標準体重×C>
<身長×身長×22=標準体重>
標準体重が決まると、次にはC(労作別体重1kg当たりの所要キロカロリーの値である。
一般事務職(1日座って仕事をする人)ではCは25~30とする。主婦、教師、看護師、医師などはCを30~35とする。農業などの戸外作業従事者ではCは35~40とする。
実際には、総カロリーはそれぞれ個人によって異なっているので、経過を観察しながら加減する。
肥満した人のCは、食餌療法開始の時点では15~20に決める。また妊婦、授乳中の婦人、20歳以下の発育期にあるものではCを大きくすることになる。総カロリーが決まると、そのキロカロリーを三大栄養素にどのような割合で振り分けるかということになる。
ところで、糖尿病の人がバランスのとれた栄養配分ができるように献立メニューを作りたい時に役立つのが「糖尿病治療のための食品交換表」である。これは食品群に分けられ、80キロカロリーを1単位として、同一キロカロリー同士の食品の量目がわかるようになっている。同書では、総カロリーが決まると、前述の栄養素の配分を考慮に入れた上で自由に食品の選択ができるので非常に便利である。
糖尿病 | 薬を使わない食事療法(病気・症状別)
運動するとインスリンの節約になるので、毎日、各自の心臓の機能に合わせて行う。空腹時を避けて食後1~2時間の時点でやるとよい。はじめは15分聞くらいから開始して、だんだんと強化して一時間前後の運動量にもっていくとよい。ただし合併症のある人は運動のできないこともある。
糖尿病の人の薬には、経口血糖降下剤とインスリン注射がある。食餌療法と運動療法で効果が認められない場合にこれらの薬物療法を用いるわけだが、もちろん医師の指導のもとに行う。
インスリン注射は毎日、自分で行なう。経口血糖降下剤にもインスリン注射にも、副作用として低血糖が起こることをつねに考えておかねばならない。
歩いたり、運動したりする機会が減った現代、糖尿病患者は増加傾向です。
糖尿病は、病状が進行しないと症状が少ないため、薬の服用も忘れがちです。自分が服用する薬のメリット・デメリットを知った上で正しく使いましょう。
以下の7種類が代表的な糖尿病の治療薬です。
高血圧 の治療において、適切な薬剤を選ぶことは非常に重要です。薬剤の選択は患者の個々の状況に応じて異なります。以下に、高血圧治療薬の選び方についての基本的なガイドラインを紹介します。
日本人が悩む代表的疾患の1つが高血圧。高血圧の薬とのつき合いも長くなりがちで、その分「本当に自分に合っているのかな?」という疑問がわくことも。
ここでは、それぞれの高血圧薬の特徴と注意点を解説。
高血圧症は、原因の明らかな症候性高血圧と原因不明の本態性高血圧症の2つに分けられているが、高血圧症の大半は、本態性高血圧症である。
この調査では高血圧症患者と正常血圧者の自覚症状(頭痛、めまい、耳鳴り、肩コリ、手足のシビレ)について有意差を認めていない。したがって、自覚症状でもって高血圧を早期発見することはできない。
そこで、高血圧の早期発見には、血圧を測定することである。特に活動的、積極的に仕事に精出す中年以上の方には、定期的血圧測定が必要である。専門医に指導を受ければ、自分で血圧を測るのもさしてむずかしいことではない。.テルモ、オムロンそのほかから自動血圧計が市販されている。
100グラム中/mg
本態性高血圧の原因が不明であることから確実な予防法はないが、食塩の摂取量と血圧の相関関係についてはよく知られている。1日の食塩摂取量が20グラムの成人では、平均収縮期血圧(最高血圧)は約150mmHGを示すが、調味料として食塩を用いることを知らないインディアンの血圧は100mmHGくらいの平均収縮期血圧である。
食塩の1日必要量は1グラムとされているので、現在の私たちの食塩摂取量は必要量の3倍ということになる(1人1日食塩摂取量12.9グラム。
高血圧を予防するため、また高血圧の治療としてもこの摂取量をできる限り少なくしたい。1日8グラム以下に制限するのはそれほど困難なことではないが、治療のためには1日5グラム以下で効果の出てくることが多い。
みそ汁のみその量を3分の1に減らす、たくあん、梅干などを3分の1に減らす、調味料として減塩しょうゆ、減塩みそを使うなどが実行しやすい方法であろう。
精神的緊張、過労、不安などが長い間続き慢性化すると、動脈の血管壁は肥厚して血液の流れは悪くなる。一定の血流を確保するために血圧は高くなるので、血管壁はますます肥厚することになり悪循環を繰り返す。
ストレス対策としては、平凡だが快食、快眠、快便ということに尽きるだろう。ストレスの解消あるいはこれを回避することは、自分自身の問題として処理できる場合もあるが、職場単位あるいは地域単位で取り組むことが必要となることもある。
標準体重に比較して20以上のの体重増加を「肥満」と呼んでいるが、肥満している人には高血圧の頻度が高い。体重を減らすと血圧は下がることが多い。したがって肥満しないことが高血圧の予防となり、肥満して高血圧症の人は、減量することがまず第一に始めなくてはならない治療法である。
運動不足で血圧が上昇することもある。全身の運動を数十分間続け、汗を流し、呼吸が頻回となり、心臓の樽動が激しくなると血圧は上昇するが、この血圧上昇は蒜的な現象で、その後に血圧下降が続き、全体としてみると、運動は血圧を下げる効果がある。特に肥満して血圧の高い人には、運動療法を続けることをすすめる。
睡眠、栄養のバランス、仕事、運動、休養などに充分な配慮を必要とする。日常生活の乱れは高血圧だけでなく消化器疾患、精神、神経疾患とも関係が深い。
酒を飲んで酔っている時には、一般的にはアルコールの血管拡張作用でもって血圧は下がっているが、その後に血圧上昇が持続するので、全体としては酒は血圧を上昇させる。
ただし、酒の作用は量の問題がからんでくるので、酒が血圧に悪いとばかりはいえない。適量(個人差あり)の酒は、精神的緊張を取り除いてくれるし、善玉コレステロールのHDLコレステロールを増加させる作用を持っている。
身体に入ったアルコールは肝臓で代謝され、その処理能力は体重1kgについて1時間に100mgとされて.いる。しかし、1日量としてアルコール換算で30g以下であるならば、酒の害はないと考えられる。
タバコと喉頭ガン、肺ガン、心筋誓などとの関係はよく研究されているが、タバコと血圧の関係についての研究は少ない。常習的喫煙者と高血圧の間には直接的な相関関係は見出されていない。しかし、タバコは心臓の血管並びに脳血管には明らかに悪い影響を与えるので、高血圧症の人はタバコを喫わないように努力することである。
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本態性高血圧の初期では血圧は不安定で、薬を服用すべきかどうか、医者でも迷うことがある。重症高血圧(収縮期血圧200mmHG以上、拡張期血圧115mmHG以上)の人には前述の予防法の実行と同時に薬の服用もすすめる。
軽症高血圧(や中等度高血圧人では前述の予防法の効果のない場合で拡張期血圧が100mmHG以上を示す人は、やはり薬の服用を考慮する。拡張期血圧が100mmHG以下の人でも、
などの条件を備えている人は、服薬を開始するのがよいと思われる。
血圧の薬(降圧剤を服用し始めた場合、原則的に生涯続けなければならない。途中で薬の服用を勝手に中止すると、危険な場合が多い。主治医の指示により中止する場合でも医師の管理のもとで経過の観察を続けてゆくことになる。
血圧の薬はその作用機序に従って大別すると、利尿剤、神経系に作用する降圧剤、血管拡張剤の3種類に分かれる。本態性高血圧に有効な薬は、医師の処方を必要とする医療用医薬品がほとんどである。
薬局で自由に買える般薬では漢方製剤がある。血圧を下げる漢方薬はこちら。
血圧を下げるのは降圧剤ばかりでなく、生活習慣、食習慣が大きく影響する。薬を使わずに血圧を下げるには詳細情報が紹介されている。
高血圧を放置すると、血管が硬くもろくなる動脈硬化の進行が加速し、さらなる高血圧を招くとともに、脳出血や脳硬塞、狭心症や心筋梗塞、腎不全など命に関わる病気を発症する危険性が増大します。早めに治療を開始し、高血圧薬などで継続的にコントロールすることが重要です。
高血圧の治療薬は、血管を収縮させる物質の働きを抑える薬、利尿剤、血圧を上昇させる交感神経の働きを抑える薬に大別される。
出された薬をきちんと飲むと同時に、薬だけに頼らず、減塩や運動を心がけるなど、生活習慣の改善も重要になる。血圧は、市販の血圧計を使い、自分で簡単に測定できる。
きちんと血圧コントロールができているかを把握するためにも、定期的に測定する。自宅で血圧を測定するときは毎日同じ時問に、同じ姿勢、同じ場所で測ることが大切。
血圧測定は座って行い、腕などの測定部位が心臓と同じ高さになるようにする。起床後に加え、自分が決めた時間帯にと、1日2回くらい測定するとよい。
加齢とともに動脈硬化が進む傾向があるので、高血圧の薬を飲んでいても、血圧が上がってくる人も多い。今飲んでいる薬では血圧をうまくコントロールできなくなってきたと感じたら、血圧記録を持参して主治医に相談する。
また、高血圧の薬を服用中に、便秘や下痢などの胃腸の症状や、頭痛、めまい、ふらつきなどが現れた場合は、薬の見直しが必要になることもあるので、主治医か薬剤師に相談する。
体に合えば民間療法でも血圧を下げ安定させることも可能。生活習慣を改善することとむやみに怒ったりしないことも大切。
妊娠の5~6週頃にはじまる悪心、嘔吐は「つわり」である。初めての妊娠では症状は強く、経産婦では症状は軽くなる。普通の悪心、嘔吐とは違って、早朝空腹時に起こることが多い。
たいていの場合、16週頃になると自然に消えるが、なかには重症化して嘔吐が続き、全身状態の悪くなることもあり、妊娠悪阻と呼ばれている。胎盤の絨毛より出てくるいろいろな物質が、母体の内分泌、代謝、自立神経に作用して失調をもたらすとされている。
漢方薬が良く効く。畑の中などによく生えてくる半夏を主剤としたものが多い。
小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)は、つわりの初期に頻繁に与えるとよい。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)は咽頭部の異常感や、胸がつかえるなどと訴える、神経質な、あるいはヒステリーの性格の方に適した薬となっている。
母体と胎児、環境と胎児の関係を研究する新しい医学の分野に胎児学(出産前医学)がある。この方面の医学の進歩にはめざましいものがある。
わが国には昔から「胎教」という言葉があり、妊娠中の婦人の心得として民間療法的な色の濃い存在であったが、今や科学的な裏づけがなされつつある。
一般的に大きな騒音、叫び声、怒号、母親の感情の動揺で胎児脈拍数はぐんと多くなる。母親の喫煙、アルコール摂取が胎児に悪い影響を与えることもはっきりしてきた。
妊娠中に服用した薬の副作用は、母体と胎児の両方について考えなくてはならない。さて妊娠中の母体の生理的変調は、胎盤と胎盤ホルモン、胎児の容積によるもので、代謝の克進、循環器と内分泌系の不安定、血琴量の増加などが起こっている。
薬の作用ならびに副作用も少量で出てくることもある。妊娠中の糖尿病の薬としてインスリン投与を行うことがあるが、低血糖におちいらないために普通に投与するよりも少量から始めるのは医師の常識である。
その他、睡眠剤、鎮痛剤、感冒薬なども服用は極力避け、服用する場合には医師の指示に従って少量を用いる。予防接種は妊娠していないときに受けるべきで、特に生ワクチンの接種は受けない。
胎児への薬の副作用で問題となるのは、いろいろな器官の発生する妊娠の始まり(着床) から3ヶ月の終わりまでの時期(胎芽期、器官発生期) である。
この時期に母体の服用した薬の障害は形態異常、すなわち「先天奇形」となってあらわれることがある。妊娠中期(器官形成期)からは、胎児の薬に対する感受性は低下はしても、なお薬の傷害はいろいろな器官の機能異常をもたらす。
したがって、流産、発育遅延、臓器機能障害、知能障害、病弱、短命などの異常が出てくることもある。次にあげるものは、妊娠初期に用いると催奇形作用の危険性がある薬である
検査薬を利用される場合には、「使用上及び取扱い上の注意」を繰り返して読んでいただきたい。なお妊娠していなくても結果が陽性に出ることもあるし、陰性でも安心できないこともある。
近頃の家族構成をみると、ひとりっ子の家庭が多い。それぞれの家庭で住宅事情や金銭の面を考えて受胎調節が実行されていることを物語っている。
受胎調節として最近いろいろな意味で問題となっているのがピル(経口避妊薬)とIUD(子宮内避妊器具) である。
ピルの服用は今や全世界で行われていて、その数は5000万人以上に達するといわれている。わが国では肝障害、血液凝固系への影響、妊娠した場合の胎児への影響などが問題となって、一般的ではない。
月経困難症や卵巣機能不全、月経周期の調節のためにピルを医師が渡しているのが現状である。ただし、近い将来には経口避妊薬として承認される状況となった。
ピルにはいろいろな種類があるが、合成黄体ホルモンと合成卵胞ホルモン系の合剤(低用量ピル)が主流を占めている。低用量ピルがよく使われており、以前に比較すると副作用は減少して、そのうえ効果は抜群である。
服用は1日1錠、月経周期の第5日から服用を開始して22日間続ける。しかし乳ガン、子宮ガン、血栓症、肝疾患の患者ならびに疑いのある場合には服用してはならない。
もちろんのことであるが、服用前には医師の診察を受け、指示に従うことが大切である。IUD はリングの名で知られている。婦人科医師による子宮内挿入と定期的検査を受けなくてはならない。
全世界の使用者数は5000万人以上と推定されている。わが国で使用許可になっているリングは、まだまだ少ない。ある産婦人科医の話によれば、「IUDを装着している女性が100人いれば、1年間にそのうち2~3人は妊娠している」とのことで完全な避妊はのぞめない。
脳卒中は脳の血流障害によって急に意識を失ったり、半身不随や嘉障害などが起こってくる病気で、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血などがある。タイプによって手当や治療が違う。
脳出血の原因としては、高血圧性脳出血が頻度としては一番多くて、寒い季節、高血圧の人に起こる傾向がある。たとえば、元気に仕事をしていた人が突然その場に倒れ、意識がなくなり半身不随となり、嘔吐、尿失禁を認め、医師の往診で脳出血とわかる。
突然死を防ぐはこちら。
大出血を脳の中で起こしている場合には、意識障害も強く起こり、呼吸が異常となり、大きないびきをかき、ときには全身のけいれんを起こすこともある。
はじめての卒中発作でその約40% は数日内に死亡するが、1週間以上生存しえた場合には生命の予後は比較的良好といえる。
脳出血の予防は高血圧の治療と予防を心がけることが一番大切である。脳梗塞には脳血栓と脳塞栓の2つがある。脳血栓は、もともと脳動脈硬化が基礎疾患としてあり、その硬化した動脈壁に血液が凝固して血栓を形成してくる場合で、症状は段階的に進行する。
言語障害などもだんだんと進行してゆく。脳塞栓は、脳出血の場合と同じく突然起こることがしばしばで、その基礎疾患として、心臓病、不整脈(心房細動)、頚動脈や大動脈に病変が認められていることが多い。
前記の疾患によってできあがっていた血栓が血流ではこばれてきて、脳動脈につまるわけである。したがって脳出血の場合と違って季節的な影響は少ない。
また、「片方の手や足が数分動かなくなった」、「まるでカーテンを引いたように目の前が暗くなる」などの前ぶれがあるのが特徴である。脳を包んでいる三層の膜のうち、外から二番目のものをくも膜という。くも膜下出血の80% は脳動脈瘤の破裂によって起こっている。そのほかの原因として、高血圧、動静脈奇形、動脈硬化、腫瘍、炎症、頭部外傷、出血素因などが挙げられている。
症状は多くの場合、突然に後頭部痛、項部硬直、嘔吐が起こり意識が障害され、24時間内に15%が死亡する。治療は脳外科医の関頭術による動脈瘤のクリッピングである。
脳卒中の患者は、可能な限り入院治療を原則とし、医師の指示に従うことである。病院への移送が困難な状態としては次のような点が挙げられている。血圧の著明な低下、深い昏睡状態、呼吸の乱れが著しい、両側瞳孔散大対光反射消失、体温の低下、除脳硬直を認める、などである。
このよどうこううな状態で移送する場合には、途中で死亡する危険性が大きくなる。脳卒中急性期の治療には医師と看護婦のチームワークが要求される。
呼吸、血圧、脳圧、補液栄養補給が大事。
投与する薬は、死に瀕している脳細胞を助けるためのもので、脳圧を下げ、脳の血流と代謝を正常に戻し、血液性状を改善する薬であることが要求される。
脳卒中の後遺症として四肢の運動マヒ、言語障害、知覚障害の残ることが多いので、リハビリテーションを行うことになる。一般的には臥床期からはじめる。体位変換、他動運動、自助他動運動、自動運動、起坐訓練、起立訓練、歩行訓練の順に進めていく。理学療法士、作業療法士らの専門の訓練士の指導を受けて気長に努力することで、四肢の麻痺はかなりの程度まで回復することが多い。
失語症のリハビリテーションは、四肢の麻痺回復ほどには効果のあがらない場合が多い。脳の損傷部位により言葉の理解が障害されている場合と、表現が障害されている場合の2つがある。いずれも言語療法士によって行われることが原則。言葉や文字の訓練をして社会復帰を目指すには、長い期間を覚悟して、患者、医師、療法士、家族の協力が必要である。
脳梗塞の治療に使われる薬はこちら。
日本人の平均余命は男性が76歳、女性が82歳となっており、世界各国との比較では、男女ともに1位は日本である。2位は男性ではアイスランド(75.7歳、3位香港(74.9歳、女性の2位はフランスで80.9歳、3位が香港で80.5歳となっている。
死因順位は、1位は悪性新生物(ガン)、2位が心疾患( 心筋梗塞など)、3位が脳血管疾患(脳出血など)となっており、昭和六十年以降、変化はない。
総死亡数に占めるこれら3大成人病の合計は61% となる。つまり、100人の死亡数のうち61人は三大成人病で死亡している。
ヒトの身体を構成する基本単位は細胞で、ヒト1人は60兆個の細胞でできているといわれる。この細胞の内部では、糖質、脂質、アミノ酸などの低分子化合物はもとより、多種多様の構造と機能をもった高分子化合物であるたんばく質が数万種類も作られている。
たとえば、化学反応を触媒する酵素、身体を構築している構造たんばく質、インスリンのようなホルモン、抗原に抵抗して病気を治してくれる抗体(免疫グロブリン)、細胞の表面や内部に設置されていて、ホルモンあるいは酵素とドッキングして効果を発拝する受容体(レセプター)など、すべて細胞の内部で合成されている。
細胞の内部はまさに物質合成工場である。そこで主役をつとめるのは、遺伝子(染色体DNA)と呼ばれる二重らせん構造をもった高分子化合物である。
この遺伝子が集合して染色体を構成している。ヒトの染色体は、2本1組の相同染色体として23組、46本ある。二本の染色体がⅩ型に交差した相同染色体の一方は母親から、他方は父親から遺伝したものである。
この46本の全染色体の上には十万個の遺伝子が存在するといわれている。遺伝子は前述のとおり、細胞内での物質の合成に主役を演ずるだけではなくて、細胞分裂に際しては、自分自身を正確に再生することができる遺伝の機能的単位でもある。
これが「遺伝子」の名前がつけられた所以である。細胞の中で合成されるたんばく質を主成分とした高分子化合物の中には、本来の生理的機能を発揮することのできない、いわば欠陥商品のような高分子化合物が合成されることがある。
このような欠陥商品の製造は先天的にも後天的にも起こっていて、これは合成工場で主役を演ずる遺伝子に欠陥があるためとされている。これが原因となって病気が出てくる場合には、遺伝子病と呼ばれている。
たとえば、細胞の表面、あるいは内部に設置されている受容体の異常によって起こる遺伝子病には、「インスリン受容体異常症」(糖尿病)、LDL受容体異常症(家族性高脂血症) を挙げることができる。
いろいろな悪性新生物であるガンをはじめとしてほとんどの成人病、精神・神経疾患、代謝性疾患、遺伝性疾患には遺伝子が直接あるいは間接的に関与していると考えられている。
遺伝子にはまったく関係のないと思われる外傷にしても、細菌による感染症にしちゆても、治癒過程にはもちろん免疫反応が関与しているが、それらの起こる根源的なところでの関与も最近では検討されている。つまるところ、遺伝子に関係のない病気はないといっても過言ではない。
老化は25歳頃から始まるといわれるが、いつも休まず働きつづける血管から、真っ先に老化が進むので、ガンは別として、脳血管疾患(脳出血、脳梗塞)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞) は、いずれも血管の病変が原因となっている。
狭心症、心筋梗塞 動脈硬化の予防が最善策 | 血液・血管の浄化
そこで、高血圧、高脂血症、糖尿病などの、血管を傷害する病気を早期に発見して治療することが成人病治療の最大のテーマということになる。
人間ドックで早期発見できれば、何倍もの治療効果がある成人病を発見されても悲観することはない。早期に発見して早期治療を加えれば健康な人と変わらない天寿を全うすることが可能である。
よく、「一病息災」といわれる。持病のある人は、医師との付き合いが日常化されていてその指示が受けやすく、日常生活での節制を心掛け、無理をしないという習慣が身についているためと思われる。
しかし、死に至る成人病のほとんどは、治療効果のあがる早期の状態では発見されていない。人生80年時代を生き抜くためには、定期的な健康診断(人間ドック)がどうしても必要である。