小児のうちに治しておく
アトピー性皮膚炎は、非常に増えてきた子供の皮膚病です。「子供の皮膚病の半分くらいはアトピー性皮膚炎である」ともいわれているくらいである。
これには体質的な遺伝があって、その血族にはじんま疹、喘息、アレルギー性鼻炎のようないわゆるアレルギー性の病気がある人が多い。
症状は一般に赤ん坊の時、小児、成人と少しずつ変わってくるのも特徴の1つである。
赤ん坊の時の湿疹は乳児湿疹ともいって、顔から頭が赤くなってくる。それに黄色っぽいかかさぶたがついたり、赤いぽつぽつした丘疹が加わってかなり汚ない感じがする。
このような症状は生後2~3ヶ月から半年くらいまで続くことが多いが、この時期のものは放っておいても自然に治ることが多い。治療は、湿疹といえば副腎皮質ホルモン剤といわれるほど、近年はよく使用されるようになったが、黄色っぼいかさぶたなどにはあまり効かない。
かさぶたを取るには亜鉛華軟膏をガーゼなどの布に伸ばして貼っておき、翌日オリーブ油で軽くふきとる。これを数日行うと取れてくる。
かさぶたが取れたら副腎皮質ホルモン剤でよい。非ステロイド系抗炎症剤の入っている軟膏などがよく効く。
症状によっては皮膚の炎症を抑制する力の強いデキサメタゾンが入った副腎皮質ホルモン剤である軟膏を1日数回局所に塗布すると、たいていのものは1週間くらいでよくなる。
これでも効かない時はリンデロンを使う。このほうがもう少し強力である。アトピー性皮膚炎が小児になってできると、少し違う症状をみせるようになる。つまり2~3歳頃から始まる症状で、主に身体が乾燥して鳥肌になり、非常にかゆがる。鳥肌様の皮膚は赤くなることもあるが、一般にはただざらざらしているだけで痒い。
ひどい場合は患者はもちろん、母親までが睡眠不足になってしまうことがあり、子供は成人してからも神経質になって困ることが多い。経過は、一般的に冬に悪化して、夏には軽快するが、この逆のこともある。
またこの病気の8割は学齢期頃には治ってしまうが、ここで治らないと、思春期頃には成人型のものに移行する。治療は、一見大した変化がないのに痔がるので、かゆみ止めとして抗ヒスタミンを含有し、さらに炎症抑制効果のあるハイドロコーチゾンが入った薬がかなり有効である。
これでも効果がない時は副腎皮質ホルモンであるベトネベートは相当に痔みを抑えることができる。また寝る前にやはり抗ヒスタミン剤であるレスタミンコーワ錠を飲むとぐっすり眠れるので引っかいたりすることがなくなる。
アトピー性皮膚炎の屈側型
この症状は関節の内側、頚、背中、顔などに苔癬性変化、つまり皮膚の溝が大きくなる症状がでてくるのが特徴である。肌理が荒くなるわけである。全身の皮膚がざらざらしているようなこともあるが、今述べたような変化がこの病気の一番の特徴で、かなり痔がる。
症状が軽い場合は興和新薬 新レスタミン軟膏 30gでも間に合うが、思春期以後に起こってくることの多いこのタイプでは、やはり副腎皮質ホルモンの入った外用薬でなければ効かないことがしばしばである。
といっても、副腎皮質ホルモン剤ならどれでもよいというわけではない。症状の軽いものは作用の弱いものを塗るべきである。というのはこれらの副腎皮質ホルモン剤は長いこと塗らなければならない時には、時として副作用を起こすことがあるからである。
薬の効果を生かし、吸収を早めるODT療法(密封療法)
単純に塗布を繰り返しても治らない時はODT療法を行うとよい。ODT療法というのは、副腎皮質ホルモン剤を塗った上を空気が入らないようにしてしまう方法である。
そして薬剤の有効成分が表皮を通過しやすくする。したがって、1時間や2時間でやめてしまうわけにはいかない。この方法を行ったほうがよいと考えられる病気の部たいせん分は、皮膚が硬かったり、音痴化といって、皮膚の溝が深く明瞭に見えるような所である。方法は副腎皮質ホルモン剤のうち、主にクリーム状の薬を使用するのがよく、これを患部に少し厚く、白く見えるほどに塗って、それをサランラップのようなプラスチックフィルムを貼り、周囲を秤創膏などで留め、空気が入らないようにしてしまう。
なるべく皮膚と密着したほうがより効果があるので、密封した上から包帯を巻いてやるとさらに治りが早くなる。ODT療法用につくられたもの専用のテープもあるこれは副腎皮質ホルモンであるフルドロキシコルナドを含有している密封療法用のテープである。このテープは皮膚と密着するのでホルモンとしての作用は弱いのに、よく効く。また指とか手のようにODTがしにくい部位でもよくできるので便利である。
アトピー性皮膚炎の飲み薬
この病気は痒みが強いので、とにかく痒みを止める方法を考えなければならない。それには抗ヒスタミン剤の内服がよいが、抗ヒスタミン剤は痒み止めであると同時に眠くなるという副作用がある。
これがこの薬のよい副作用でもある。赤ん坊や幼児には、甘味のあるシロップがある。少し大きくなって粉薬が飲めるようになったら、レスタミンコーワ 糖衣錠 120錠が作用が強いので便利である。この薬は小児科では食欲増進剤としても使われている。
アトピー性皮庸炎の人の入浴、食事、下着
昔から湿疹ができた時は入浴は禁止されたものだが、現在はその逆で、入浴して皮膚を清潔にしておくことが大切とされている。また、石けんは刺激があるとされてきたが充分に洗えば刺激作用は起こらない。石けんで湿疹が悪化するというのは、入浴中に爪で引っかいたりタオルでごしごし擦るからである。また、下着類は必ず木綿製晶を用いる。
アトピー性皮膚炎は一般に皮膚が乾燥しているので、あまり洗浄力の強い石けんは望ましくない。ひと頃は湿疹石けんともいわれたが使われた時代があったが、この石けんの成分のラウリル硫酸ナトリウムは、多少、人によっては刺激性があるので、普通の浴用石けんを静かに使うのがいいだろう。
また弱酸性石けんであるミノン石けんを用いてもよい。いずれにしても、石けんを使う時は、タオルなどで皮膚をごしごし擦るのは厳禁である。
アトピー性皮膚炎の治療に厳重な食事療法が有効であったとする報告がテレビや週刊誌で報道されている。ダニ、家塵、牛乳、肉、卵白などが抗原となって起こるアレルギー反応による皮膚炎がアトピー性皮膚炎であるとする説である。
確かに特異IgE抗体が牛乳や卵白で陽性になっている患者は多い。しかし生まれながらにしてアレルギー体質をもつケースでは普通の食品さえ、取り入れてはいけないことになってしまう。
現在のところ、この食品とアトピー性皮膚炎の関係については明確な解答は得られていない。1ヶ月食事療法を行なって無効ということになれば、それ以上の食事療法は、栄養学的なバランスを考慮すると中止したほうがよいと思われる。
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