ビタミン不足を補うためでなく、病気の治療にも用いられ
最近、テレビや新聞雑誌で高単位のビタミン剤の宣伝が目立つことに気付いている方も多いだろう。ビタミン剤をオフィスの机の中に入れていて、常用するような人ならとっくにご承知のことだろうが、1988年、厚生省は一般薬のビタミン主薬製剤製造承認基準を改定した。
以来、1日当たりの服用回数や1錠中の配合量の増加が認められた。つまり、製薬業界の人が「高単位型」と呼ぶビタミンが主流になってきたわけである。ハイシーL、などは、従来の2~4倍の高単位型で、若い人に人気があるという。
以前からアメリカでは、ビタミンは食品感覚で売られていた。ビタミン不足を防ぐだけでなく、かぜや頭痛を治すためにも用いられる。日本も、「ビタミン王国」へ1歩近づいたともいえるだろう。
自分で買えるビタミン剤のいろいろ
- 総合ビタミン剤
- E剤、C 剤など、単一のビタミン剤。
- 2~3のビタミン剤が混合されたもの
- ビタミンB1、B2、B6、B12などのBグループのビタミン剤。ほかの薬剤と併用して用いられることが多い。
抵抗力のある身体をつくるビタミンA、D剤
成長期の子供で、やせていて虚弱体質の児童で抵抗力のないものに往々にしてビタミンA 、Dの不足があるといわれる。ことに偏食のはげしい、胸部の骨格の悪い子供にはA、Dの不足がある。それには肝油がよい。マンボウの肝油はこちら。
肝油はタラやオヒョウの肝臓である。日光にあたらない幼児は骨が弱く、O脚やX脚ができやすい。日光にしっかり当たることが大事。
B1剤で「睡眠不足、身体のだるさ」をのりきる
やたらと眠く、倦怠感が強い時にビタミンB1剤を試してみるのもよい。B1は体内でいろいろな生体内反応を助け、特に炭水化物の代謝を助ける。B1が不足すると筋肉や脳の働きが鈍り、がんばりがきかない。
自律神経過敏症の人、とにかく白米食が好きで副食が少ない人、甘い物が好きな人、外食の多い人は疲労感、頭重感が起こることがある。
このような時は、B1の多い小麦や玄米の胚芽を別にとるとよい。
口内炎にはビタミンB2、B6
青森地方に「シビガッチャキ」という‰欠乏症がある。舌が赤く腫れ、眼腺縁、口角などが赤くなり、ひび割れ、肛門周辺にも同様の変化を起こす。青森のこの疾患は1955年くらいまでは多かったが、栄養の回復とともに減少している。
これほどB2の欠乏の症状がそろった病気は今日では一般に少なくなったが、慢性胃腸症、抗生物質を長期間使用しなければならないような疾患にはときどき見られることがある。それはB群のうちのニコチン酸を腸内細菌が合成しているからといわれる。
ビタミンB6は酵母中に多量に含まれるビタミンで、肝細胞と神経細胞の働きを活発にし、また脂質代謝を促進させるので、コレステロールが高い時も使用される。皮膚科的には脂漏性湿疹という脂質代謝異常に使用されている。
女性の味方貧血に効きめのある鉄剤
貧血とは、赤血球が減少して血色素の減少するものであるが、「隠れた国民病」といわれるほどで、特に女性に多い。貧血の原因は多種で一概にはいえないが、顔や爪が蒼白い、倦怠感が強いといった時は、一応、貧血を考えてみる。
たいていは鉄欠乏性貧血といわれるもので、鉄分が減少しているものである。中にはビタミンB12の不足で起こる大赤血球貧血と呼ばれる。赤血球が半分以下になってしまうようなものもある。
貧血の症状があらわれると一朝一夕では回復しないもので、内科の専門医の治療を受けなければならないが、頭が重いとか、動悸がするといった重い症状のないものであれば、食事とビタミンの摂取を心がければ大丈夫。
ストレスやかぜの予防、抗ガン作用もあるビタミンの万能選手はC剤
かつてビタミンCが脚光をあびたのは、しみ、そばかすといわれる顔面の色素沈着に効くといわれるようになったからである。しかし、しみなどにも思ったほどの効果があがっていないなど、多少イメージダウンしたところもあった。
最近は、ビタミンC化粧品「プレミアムEX Cウォーターローション」などの効果に注目が集まっています。
それが、アメリカのノーベル化学賞と平和賞の受賞者、ポーリング博士が著書で大量摂取(50~60mg) をすすめたため、ビタミンCが再認識されてきた。
- ガンの予防。
- ガン治療。
- かぜの予防・治療。悪玉コレステロールを減らすなど成人病の予防、治療。
などの効用を挙げている。
ビタミンCを多く含む食品
成人病予防にしっかり摂りたいビタミンE
ビタミンEは鶏の不妊を治療するビタミンとして発見されたもので、ヒトの不妊にも使用されることがある。また、なかなか妊娠しない、習慣性に流産してしまうなどの場合にはいろいろの原因があるが、その一因としてビタミンEの不足が考えられる。
そのほかに、老化の予防がある。老化は動脈硬化、糖尿病などいろいろの成人病に関係しかさんかししっているが、過酸化脂質と呼ばれている体内の「サビ」によって起こるといわれている。
このサビ止めの役をするのがビタミンEであることが最近いわれだし、ビタミンCと共にブームになっている。ある学者はビタミンEは毎日、100~400mg摂取することをすすめている。
それにはビタミン製剤を利用することになる。ビタミンEを買う時は注意がいる。ビタミンEにはいくつかの種類があるが、人間に有効なのはα-トコフェロールであるからであるから、これの含有量を調べて、多いほうを求めること。
理想的なビタミンEの摂取方法
ビタミン剤の効果をより高める方法
ビタミンは多種類あるが、これらは相互に密接な関係があって、あるビタミンの欠乏症が起これば、そのビタミン以外のビタミン類の欠乏を起こすことが多い。
たとえばベラグラという、手足が赤くなり、精神障害を起こす病気では、ビタミンB2だけでなく、Bグループ内のニコチン酸アミドが欠乏し、たんばく質代謝に異常をきたす。このようなことから単一のビタミンを内服するより、多種のビタミンを同時に少量ずつ用い、さらにビタミン作用を補助するためにミネラルを添加したもののほうがよく、これらを製剤としたものを総合ビタミン剤という。
食事のみでビタミンは足りるのか?
ここでは食事とビタミンの関係を説明しょう。現代は「飽食の時代」と言われている。その現代人に、どうしてビタミン不足が起こるのだろうか。私達にビタミン剤が本当に必要なのは一体どういう時なのだろうか。
さて、私達が生命を維持していくのに、たんばく質、脂質、糖質、ミネラルのほかに、「微量でもよいがどうしても必要な栄養素」があることを実験的にはじめて証明したのは、イギリスのポプキンスで、のちに彼はノーベル賞を受けている。ビタミンの命名者は、ポーランド生まれの化学者フンクで、1912年のことである。
ビタミンというドイツ語は、ビタとミンの2つの言葉をつなげたものである。ビタは生命の意をあらわす接頭語、ミンはタンパク分解産物であるアミンをあらわしている。
つまり「生命に必要なアミン」という意味からの命名だったが、のちに必ずしもアミン類ではないことがわかった。ビタミンはカロリー源ではない。
自動車にたとえて説明してみよう。たんばく質、脂質、糖質のいわゆる3大栄養素をガソリンとみると、ビタミンは潤滑油のエンジンオイルで、これが切れると機械はよく働いてくれない。つまり、ビタミンが欠乏すると体内の生理作用のコン小口ールがうまくいかなくなるのである。
もちろん、ガソリンが悪かったり、不足したら、いくらオイルをさしても自動車は走ってくれない。ビタミンは体内ではほとんど合成できない。だから原則的に、食物でとらなくてはならない。ビタミンは食品中に、吸収されやすい天然の状態で含まれている。現在、多くのビタミンが発見され、化学的に合成されるようになった。
ビタミンの「所要量」と「保健量」はどう決めるか
各ビタミンの欠乏症や薬理作用や臨床的応用については、あとで説明するとして、どれだけとったらよいか、まず「所要量」から考えてみることにする。
成人の1日の所要量をみると、50mg(VC)とか。100mg(VO)とか実に微量である。mgで所要量のあらわされているものが、水に溶けやすい性質のビタミン「水溶性ビタミン」、IUであらわされているのが、反対に油に溶けやすいビタミン「脂溶性ビタミン」である。ビタミンは、水溶性、脂溶性に大別される。よく注意していただきたいのだが、ビタミンの使い方は、水溶性と脂溶性では異なってくる。
さて、所要量とはなんのことか早く言うと、平均的な最低必要量(目安)のことである。ビタミンCの所要量50mgは、レモンや柿1個分で間に合う。レモン1個、柿1個分程度のビタミンCを摂っていると壊血病にはかからないという意味である。
ところがビタミンはデリケートで、食物から摂る場合、いろいろな問題がでてくる。たとえば、パセリについでビタミンCが多いブロッコリーは、ゆですぎるとほとんどビタミンがゼロになる。
みかんやりんごをミキサーにかけると、ビタミンCはかなり失われてしまう。野菜は、季節により、栽培方法により、ビタミンCの含有量は、食品成分表とは違ってくる。
これはすべてのビタミンに共通していえることである。すべてのビタミンを食事からとることはむずかしい。とくに老人はむずかしい。加えて、バランスのとれた食事をしている人はきわめて少ない。
こうしてみてくると、ビタミンは不足しがちで、ある学者は所要量の2~3倍、つまりビタミンCなら200mgの摂取をすすめているのも一応うなずけるだろう。
この量を「保健量」という。「ビタミンCを1日2~3以上大量投与すると、ガンの予ちゆ防や治癒に効果があり、かぜをひかない」、と主張して、メガ・ビタミン主義を唱えている。もっともアメリカではビタミン剤は薬ではなくて、食物として考えられていて、スーパーで売られているという事情もある。
ビタミンにも怖い副作用がある
高単位ビタミンとしては、ビタミンCとEがある。どちらも健康を守る役割をするわけだが、この2つはタイプが異なる。
ビタミンCは、水溶性といって水に溶けて尿中に排出れるので、副作用は一応、心配ない。ビタミE は、脂溶性ビタミンといって、油脂に溶解して水に溶けないのだが、ビタミンEにかぎりとりすぎても体外に出てしまうので、ほとんど心配ないとされている。
過剰に摂取したとしても、余分なものは体外に排泄してしまう水溶性ビタミンには、B1、B2、ナイアシン、B6、パントテン酸、葉酸、B12、C がある。逆に、長期に過剰摂取すると、体脂肪の中に蓄積される脂溶性ビタミンに、A、D、Kがある。
こんな食物からとりたい脂溶性ビタミン
これらのビタミンの特性は、服用すると体内の脂肪分によく溶けるので、体内に蓄積されやすい。
ビタミンA
肝油、バター、卵黄、牛乳、緑黄色野菜に多く含まれている。
皮膚や粘膜の上皮の角化の正常化に役立ち、細菌感染に対する抵抗力をつける。ビタミンAは冬になると欠乏しやすいので、ウナギや小魚、牛乳、にんじん、ほうれん草などを意識的に摂ることである。
ビタミンA が欠乏すると夜盲症(とりめ)、皮膚や目の疾患、発育不良症となる。また反対に、大量に摂ると神経過敏、食欲不振、下痢、嘔吐などが小児に起き、慢性的に過剰の時は肝臓の肥大、四肢骨の肥厚などになることもあり、とりすぎに注意したい。妊婦も大量の摂取には注意を要する。
ビタミンAを多く含む食品
ビタミンD
ビタミンD は肝油、牛や豚や鶏の肝臓、イワシやカツオなどに多い。ビタミンD は身体にとって、カルシウムの代謝になくてはならないもので、カルシウムやリンの腸からの吸収をよくして子供のくる病の予防や治療、成人の骨軟化症などに使用される。
高齢者は所用量の3倍位を摂るとよい。動物体内にあるデヒドロコレステリンなどが紫外線にあたるとビタミンDに変化する。それゆえ、日光にあたると皮膚中のプロビタミンDからビタミンDができるから欠乏は起こりにくいが、ビルの谷間みたいな所や雪国で生活する人は欠乏しやすい。
ビタミンDのアンチエイジング効果
ビタミンE
このビタミンは米や麦の胚芽油、綿実油、紅花油、緑黄色野菜の中に多く含まれている。これがマウスで欠乏すると、雄では睾丸が萎縮して精子ができなくなり、雌では妊娠の維持に障害が起こって胎児が子宮内で育たずに死んでしまう。
こういうことからこのビタミンは抗不妊ビタミンと呼ばれた。ヒトではこの欠乏症ははっきりしていない。しかしこのビタミンは脂肪に強い抗酸化性があるし、末梢血管の拡張性があるので、末輪循環障害のしもやけや最近では老化防止、更年期障害に多用されている。
ビタミンK
このビタミンが欠乏すると血液が凝固しにくくなって出血性になりやすい。これは血液の血漿中のプロトロンビンが減少するからである。一般には体姻沖合成されるので特に必要としないが、手術時などでの出血の予防と治療に使用される。骨髄、ほうれん草、にんじんや大根の葉などに含まれている。
ビタミンKの働きと作用
余分にとっても体外に排出されてしまう水溶性ビタミン
水溶性ビタミンは服用すると水によく溶けるので吸収されやすい。余分にとっても尿中に排泄されるので害はない。
ビタミンB1
ビタミンB1は米や麦の胚芽油、酵母、豆類、ニンニク、豚肉などに多く含まかつけれている。欠乏すると倦怠、食欲不振、動悸、腱反射の異常等のいわゆる脚気症状となる。
B1欠乏症にBlはもちろん投与されるが、その他、神経痛、筋肉痛、心疾患、腸管障害などの広い範囲の疾病の治療や予防にも使用される。加工食品、インスタント食品ばかりとっていると、B1が当然、欠乏する。激しいスポーツをする人も欠乏する。
イライラして心身が落ち着かないときはビタミンB1
ビタミンB2
ビタミンB2 は牛乳、肝臓、オートミール、アーモンド等に多く存在し、化学名をリボフラビンという黄色の結晶で光に弱い。ビタミンB2が欠乏すると口唇や口角に炎症を起こしたり、角膜周囲の充血等の症状がみられる。以前東北地方でいわれた「シビガッチャキ」はビタミンB2の欠乏症である。B2はこれらの症状の治療または予防に使用される。このビタミンの服用により尿は黄色となる。
ナイアシンニコチン酸
ナイアシン(ニコチン酸)体内のエネルギー代謝に必要なこのビタミンは、タバコのニコチンと違って毒性がなく、酵母、牛や豚の肝臓、豆類、ごまなどに多く含まれている。ニコチン酸はベラグラの予防因子として発見された。
西・中央アジアの砂漠地方でトウモロコシを常食とする地方に、皮膚が日靡けあとのように黒ずみ、皮がむける、口内炎も併発する、こういう症状が多くみられた。同様の症状はアルコール常習者にも出ることがある。
ビタミンB6
B6は酵母、肝臓、豚肉、鮭、トマト、とうもろこし、キャベツ、じやが芋、はちみつなどに多い。このビタミンの化学名は、ビリドキシンという。
マウスにビタミンB8が欠乏するとけいれんや皮膚炎が起こってくる。ヒトでの欠乏症としては皮膚炎、口内炎、口唇炎、舌炎、神経炎、湿疹、貧血などが起こる。特にアレルギーの体質、大酒家では欠乏し易い。
ビタミンB6が多く含まれる食品
パントテン酸
母や肝臓、牛乳、大豆類などに多い。マウスではパントテン酸の欠乏は発育が止まり、毛の色素沈着に障害が起こり白毛となったり、副腎に障害がみられる。
パントテン酸は広い意味で代謝に関与し、欠乏症としては人間の生命線である副腎機能の減退により性ホルモンのバランスが崩れ、神経障害のもととなる。
皮膚炎、栄養障害、肝疾患などに臨床的に応用されているが副作用はほとんどみられない。
葉酸
葉酸は、ほうれん草や肝臓に含まれるビタミンで、核酸の代謝や生成に関与している。不足すると貧血や出血を起こしやすい。
ビタミンB12
このビタミンはコバルトを含む赤色のビタミンでコバラミンといわれ、肝臓に多く含まれている。チーズ、牛乳にも含まれている。これが不足すると悪性貧血、倦怠、胃腸障害、眼精疲労の症状が起きる。B12はストレプトマイシンやオーレオマイシンの培養液から抽出して作られている。副作用はない。
ビタミンC
ビタミンCは体内の細胞維持やコラーゲンの合成、血管強化作用、色素沈着防止、解毒作用がある。また、壊血病、紫斑病、毛細管出血、口内炎、歯肉炎、皮膚の色素沈着、そばかす、熱性炎症疾患等にと用途が広い。
このビタミンは化学名をL-アスコルビン酸といい、新鮮な野菜、果物、パセリ、ブロッコリー、芽キャベツなどに多く含まれており、酸味が強い。さつま芋はとくにビタミンCの宝庫である。りんごや桃、ぶどうよりもはるかに多く、熱を加えてもほとんどビタミン含有量はかわらない。