成人病と寿命
日本人の平均余命は男性が76歳、女性が82歳となっており、世界各国との比較では、男女ともに1位は日本である。2位は男性ではアイスランド(75.7歳、3位香港(74.9歳、女性の2位はフランスで80.9歳、3位が香港で80.5歳となっている。
死因順位は、1位は悪性新生物(ガン)、2位が心疾患( 心筋梗塞など)、3位が脳血管疾患(脳出血など)となっており、昭和六十年以降、変化はない。
総死亡数に占めるこれら3大成人病の合計は61% となる。つまり、100人の死亡数のうち61人は三大成人病で死亡している。
成人病と遺伝子
ヒトの身体を構成する基本単位は細胞で、ヒト1人は60兆個の細胞でできているといわれる。この細胞の内部では、糖質、脂質、アミノ酸などの低分子化合物はもとより、多種多様の構造と機能をもった高分子化合物であるたんばく質が数万種類も作られている。
たとえば、化学反応を触媒する酵素、身体を構築している構造たんばく質、インスリンのようなホルモン、抗原に抵抗して病気を治してくれる抗体(免疫グロブリン)、細胞の表面や内部に設置されていて、ホルモンあるいは酵素とドッキングして効果を発拝する受容体(レセプター)など、すべて細胞の内部で合成されている。
細胞の内部はまさに物質合成工場である。そこで主役をつとめるのは、遺伝子(染色体DNA)と呼ばれる二重らせん構造をもった高分子化合物である。
この遺伝子が集合して染色体を構成している。ヒトの染色体は、2本1組の相同染色体として23組、46本ある。二本の染色体がⅩ型に交差した相同染色体の一方は母親から、他方は父親から遺伝したものである。
この46本の全染色体の上には十万個の遺伝子が存在するといわれている。遺伝子は前述のとおり、細胞内での物質の合成に主役を演ずるだけではなくて、細胞分裂に際しては、自分自身を正確に再生することができる遺伝の機能的単位でもある。
これが「遺伝子」の名前がつけられた所以である。細胞の中で合成されるたんばく質を主成分とした高分子化合物の中には、本来の生理的機能を発揮することのできない、いわば欠陥商品のような高分子化合物が合成されることがある。
このような欠陥商品の製造は先天的にも後天的にも起こっていて、これは合成工場で主役を演ずる遺伝子に欠陥があるためとされている。これが原因となって病気が出てくる場合には、遺伝子病と呼ばれている。
たとえば、細胞の表面、あるいは内部に設置されている受容体の異常によって起こる遺伝子病には、「インスリン受容体異常症」(糖尿病)、LDL受容体異常症(家族性高脂血症) を挙げることができる。
いろいろな悪性新生物であるガンをはじめとしてほとんどの成人病、精神・神経疾患、代謝性疾患、遺伝性疾患には遺伝子が直接あるいは間接的に関与していると考えられている。
遺伝子にはまったく関係のないと思われる外傷にしても、細菌による感染症にしちゆても、治癒過程にはもちろん免疫反応が関与しているが、それらの起こる根源的なところでの関与も最近では検討されている。つまるところ、遺伝子に関係のない病気はないといっても過言ではない。
老化は25歳頃から始まるといわれるが、いつも休まず働きつづける血管から、真っ先に老化が進むので、ガンは別として、脳血管疾患(脳出血、脳梗塞)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞) は、いずれも血管の病変が原因となっている。
狭心症、心筋梗塞 動脈硬化の予防が最善策 | 血液・血管の浄化
そこで、高血圧、高脂血症、糖尿病などの、血管を傷害する病気を早期に発見して治療することが成人病治療の最大のテーマということになる。
人間ドックで早期発見できれば、何倍もの治療効果がある
人間ドックで早期発見できれば、何倍もの治療効果がある成人病を発見されても悲観することはない。早期に発見して早期治療を加えれば健康な人と変わらない天寿を全うすることが可能である。
よく、「一病息災」といわれる。持病のある人は、医師との付き合いが日常化されていてその指示が受けやすく、日常生活での節制を心掛け、無理をしないという習慣が身についているためと思われる。
しかし、死に至る成人病のほとんどは、治療効果のあがる早期の状態では発見されていない。人生80年時代を生き抜くためには、定期的な健康診断(人間ドック)がどうしても必要である。