急性胃炎

食べ物を口にしないで胃を休めることが大事

日頃あまり食べ慣れないような、珍味やご馳走を次から次へと出されると、よく噛まないで食べたり、つい食べ過ぎたりするのが人情である。このような暴飲暴食で胃が痛むのが急性胃炎である。

急性胃炎では、原因があって短時間の後に、心窩部(みぞおち)痛、げっぶ、吐き気、嘔吐、めまいなどの症状が出てくる。食欲はなくなり下痢を起こすこともある。
舌の表面をみると舌苔白く厚くなっているし、心窩部を圧迫すると痛む。人によっては三38度前後の熱が出ることもあるが、発熱は長く続かない。

急性の炎症を起こした胃の粘膜をファイバースコープで覗いてみると、赤くなって腫れているように見える。時には、出血を伴ったタグレを起こしていることもある。このような症状は、熱すぎたり、冷たすぎるものを食べたり飲んだりしてなることもあるし、かぜを引いた時や鎮痛剤、抗生物質、感冒薬などの強い薬を服用した場合にも起こる。

胃腸の丈夫な人でも、睡眠不足、過労、精神的ストレスなどの続いた場合には、日頃食べ慣れた食物にも急性胃炎を起こすことがある。

肉体的、精神的ストレスが続いて無理をしている人は、急性胃炎にかかりやすい状態に置かれていると考えられる。

いずれにしても急性胃炎は胃を酷使したり刺激したりすることが誘因となるので、胃に休養をとらせることが治療の第一歩であり、1日ぐらいは絶食して安静を保つことが肝要である。

薬としては胃酸を中和する作用のある制酸剤、胃粘膜を保護修復する作用のある保護修復剤、痛み、悪心、嘔吐を止める作用のある鎮痙・鎮痛剤、消化をよくする作用のある消化剤をおすすめする。

胃腸薬として薬局・薬店で売られている薬には、いろいろな作用をもったものを組み合わせて総合胃腸薬として製品化されたものが多い。薬効はほとんど同じと考えられる胃腸薬でも、製薬会社によって製品名は違っている。目的・症状に応じて次のような薬の選択をおすすめする。

食べすぎの時の消化酵素製剤

消化作用を助けるために消化酵素製剤の服用がすすめられる。食物中の栄養素であるでんぶん、たんばく質、脂肪などは、そのままの形では吸収されない。

胃腸からの吸収を可能にするためにはアミノ酸、ブドウ糖、脂肪酸などに分解して吸収可能な形にしなくてはならない。食べすぎた場合には自分自身の消化能力には限界があるので、薬としての消化酵素で消化能力作用を増強してやるという考え方である。

強い消化作用をもった消化酵素製剤に、新タカヂア錠がある。
でんぶん糖化酵素であるジアスターゼをさらに強力にしたタカジアスターゼN1を主成分としており、でんぶん消化酵素アミラーゼ、たんばく質消化酵素プロテアーゼ、脂肪消化酵素リパーゼ、繊維素消化酵素セルラーゼの作用をあわせもっている。
消化作用は胃液や重曹による影響を受けにくく、至適pHの範囲は広い(pH 3.5~5.5の範囲)

消化酵素製剤にはそのほかに、タケダ胃腸薬 ザッツ21、、強力わかもと、などがある。いずれも食後ただちに服用したほうが効果的。

一般的にいって、酵素は熱やお茶の成分であるタンニンに弱く、また、その消化作用を充分に発揮するためには至適pHの範囲が決まっている。
熱いいお茶などとは一緒に服用しないほうがよい。食べすぎは胃腸障害だけではなく、他の諸臓器に対しても負担をかけ悪影響を与える。しかも病気ではないだけに、見過ごされやすい症状である。消化酵素剤を持ち歩くのもよいが、健康のために腹八分目を心がけたい。

飲みすぎ、二日酔いなどのお酒を飲む人が必ず覚えておきたいこと

アルコールは胃の粘膜を刺激して胃の痛みを起こし、ひどい時には嘔吐をまねく。
急性胃炎のうちでもアルコール性飲料の飲みすぎによるアルコール胃炎はかなりの比重を占めている。すっかり吐いてしまい吐くものがなくなると苦い胆汁まで吐いたり、時には血を吐いたりするので周囲の者まで胃が痛くなる。

また洒を飲みすぎると、翌日になって、頭痛、吐き気などの二日酔いになる。これはアルコールが体内に多量に吸収された結果、肝臓の解毒機能が追いつかなくなってアセトアルデヒドという有害物質が蓄積するために起こる症状である。

飲みすぎや二日酔いの時には、胃の中は、はじめ低酸状態であっても後には胃酸過多になることが多い。このような場合には、制酸剤の入った胃腸薬を服用するとスッキリする。

酒は適量であるならば、心身の疲労をとり除き、食欲を増し、催眠剤ともなり、明日への活力の源泉となる。問題はその飲み方である。
本当に酒好きだといわれる人は、副食物をあまり食べないで、からいものをほんのおつまみ程度にとるのみなので、しばしば胃炎になっている。盲のアルコール量は30g (ビールなら大瓶1本半、日本酒ならお銚子1本半、ウイスキーならダブル1杯半くらい) 以下に制限して、1週間に2日は休肝日のドライデイを決めておくことである。
2週間の禁酒が脂肪値を半分に | 血管はもっと若返るによれば2週間の禁酒がかなり効果的なようなので禁酒期間も重要である。

その他の胃腸薬についてはこちら。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍

1に安静、2に食餌療法、最終段階で薬を使用する

胃潰瘍、十二指腸潰瘍は、胃炎とともに日本人に多い病気の1つである。診断には、X線検査、内視鏡検査による医師の精密検査が必要であるが、見わける方法はある。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍はまとめて消化性潰瘍と呼ばれることもある。これは消化作用をもつ胃液が胃や十二指腸の内壁の粘膜組織に酸としての化学作用を発揮してただれやくずれを起こし、ついですりばち状の欠損すなわち潰瘍を作るため、自己の出した胃液で自分自身を消化することになるため、こう呼ばれる。

潰瘍が進行すると粘膜の層ばかりでなくさらにその内側の筋肉層まで損傷して、ついにはい胃穿孔、十二指腸穿孔といって胃に穴があき、急性腹膜炎を起こしショック状態で病院の手術室に担ぎこまれてくる人もある。

潰瘍にかかりやすい人は、精神労働者といわれるホワイトカラー族、心理的ストレスの強い人、暴飲暴食する人、胃酸過多症の人、運動不足の人、たえず心配事をもちストレスに悩む人などである。

潰瘍の主な症状は、周期的に出現する空腹時の胃痛(上腹部痛)、食後30分経った頃の胃痛、過酸症状(胸やけ、酸っぱいげっぶ、生唾)、吐血、下血などである。十二指腸潰瘍の特徴は、空腹になると痛みが起こり、何か食べると痛みが消える。胃潰瘍の場合でも十二指腸に続いている幽門前庭部にできた潰瘍は、空腹時痛を認めることがある。

ただ単純に空腹時の痛みだけで、胃潰瘍か十二指腸潰瘍かを判定することはできないし、また胃と十二指腸に同時に潰瘍ができることもある。
胃潰瘍にしても十二指腸潰瘍にしても、例外はあるけれども、主症状の胃痛(上腹部痛)が毎日あるので単なる胃炎の場合の胃痛とは違っている。1週間以上胃痛が続いたら警戒すべきである。潰瘍の疑いがもたれたら、まず医療機関で精密検査を受け、その診断の結果に従って治療する。

胃・十二指腸潰瘍 | 薬を使わない食事療法(病気・症状別)

潰瘍にかかった場合、まず第一に安静、第二に食餌療法、第三に薬である。安静は、心身両面の安静が大切である。肉体的安静とともに、日常生活の精神的緊張(精神的ストレス)から解放されるようにつとめねばならない。

潰瘍にも急性期と慢性期があって、急性期の特に吐血、下血のある場合には医師の指示に従って入院して治療することが必要となる。

慢性期には通常の仕事はよいとしても、残業や激務を避け、自動車の運転のような精神的過労になることは、慎む必要がある。潰瘍の食餌療法も原則的には慢性胃炎と似ていて、胃粘膜を刺激しない、栄養価の高いやわらかいものを、ゆっくり噛んで、少量ずつ食べることである。

重症の急性期の場合には絶食に引き続き、重湯、お粥、軽食とし、野菜は繊維の少ないものを、裏ごしにしたり、やわらかく煮る。
卵は生卵よりも半熟卵のほうが消化はよい。果物も酸味の弱いもの、消化のよいものをとる。食品を選択する場合、やわらかいか、かたいかという口当たりは関係ない。よく噛んで消化よく吸収されることが大切なのである。

問題は胃の中に入ってからのことである。
たとえば塩せんべいとたくあんを比較すると塩せんべいのほうがかたいように思われるが、胃の中に入った場合には、せんべいは胃液で溶かされてお粥のようになるが、たくあんは消化されにくい。食餌療法を行う場合は、病院・診療所で検査を受け、医師の指示に従って行う。禁煙を実行することも大切である。

潰瘍はなぜできるのか?

潰瘍がどのようにしてできてくるかについては、まだ明確な解答は出されていないが、次のように考えると一般療法、食餌療法を実行するためにも、薬を選択する際にも便利である。

胃粘膜はつねに粘膜を攻撃する因子と粘膜を防禦する因子の戦場となっていて、両者のアンバランス、つまり攻撃因子が相対的に優勢になると潰瘍が発生すると考えるのである。
攻撃因子の代表的なものは、胃液の中に含まれている酸の水素イオンとペプシン(たんばく質分解酵素)。防御因子となるものは、胃の表面を0.5~2.5mmの厚さで覆っている胃粘液と胃の血流並びに胃粘膜細胞の代謝など。なかでもプロスタグランジン(PGE2、I2) 代謝は防御因子の中心的役割を担っている(細胞保護作用)。

このように潰瘍発生のしくみを考えると、攻撃因子の胃酸を中和する制酸剤が潰瘍の薬になることが理解されるし、タバコは胃液の分泌を多くし、かつまた防御因子として働いている血液の流れを悪くするので禁煙が潰瘍治療に効果があることがわかる。

精神的ストレスは神経性経路(迷走神経)を通して胃液の分泌を多くし、また副腎皮質ホルモンの分泌に影響して攻撃因子優勢に味方する。一方防禦因子の血液の流れは精神的ストレスが交感神経の興奮を起こすために悪くなる。心身の安静が潰瘍の治療に必要であることが理解されたと思う。

潰瘍に効く薬

潰瘍のしくみを考えてみると、潰瘍治療薬としてどのようなものがあるかわかってくる。まず胃液の酸を中和する制酸剤、たんばく質消化酵素ペプシンに対する抗ペプシン剤、迷走神経に抑制的に働き胃液の分泌を抑える抗コリン剤、胃粘膜の保護あるいは粘膜の修復を促進する粘膜保護修復剤などを挙げることができる。

コリンとは、神経末端から分泌され、特に消化管の働きを促進させる物質のことである。胃酸の分泌はアレルギーの時などに分泌されるヒスタミンによっても分泌される。最近では胃壁の細胞に存在する受容体( ヒスタミン恥受容体)に作用して、その効果を遮断する受容体括抗剤も潰瘍治療剤として登場し潰療治療は容易になってきた。胃液の酸を中和するクスリは胃潰瘍の治療に用いられてきたが、さらに自律神経の活動を抑制して胃液の分泌を少なくし、粘膜の保護修復を促進するための薬などを配合した潰場治療薬が出ている。

胃潰瘍にかかったモルモットにキャベツを与えたところ、潰瘍が治った。このことから、キャベツの中から発見された抗潰瘍剤メチルメチオニンスルホニウムクロライド(MMSC)を主剤とする薬が製品化されている。このMMSC の入った潰瘍薬には

MMSC の作用は、潰瘍組織の再生修復と細小動脈の血流をよくすることであるが、同じような作用を持ったものにL- グルタミンがある。この薬は胃液の水素イオンの胃粘膜への侵入を抑制する抗潰瘍剤である。これを主剤として作られた製剤には、パンシロンがある。

胃液の中に含まれているたんばく質消化酵素ペプシン(攻撃因子)に対して抗ペプシン作用を持つものとしては、ヒドロタルシト がある。これを主剤とした薬にはシオノギS 胃腸薬が代表的。

胃潰瘍の薬として、医師にもよく使われているものに、アズレンがあげられる。消炎、抗ペプシン、抗ヒスタミンなどの作用を併せもっていて、さらに創傷治癒を促進する。この製剤にはパンシロンAZ胃腸薬ワクナガ胃腸薬Uなどが市販されている。

また、塩酸セトラキサート製剤も抗潰瘍薬として使われている。抗炎症、微小循環改善、プロスタグランジン合成促進、抗ペプシン、抗力リクレイン作用など、多方面にわたる抗潰瘍作用をもっている。製剤としては、センロック などがある。

軽い胃痛・激しい胃痛、それぞれの原因

軽い胃痛は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍以外の時にも起こる。胃痛(上腹部痛)は腹部病変の存在を意味する警鐘と考えなくてはならない。
痛みが軽い、それほど強くない場合には新セルベールを服用してみるとよい。本剤には副交感神経遮断作用(抗コリン作用) を持つロートエキス散が配合されていて胃の運動を抑制し胃液の分泌を減少させる。
鋼クロロフィリンナトリウムも含まれていて、胃液中のペプシンを吸着し、胃潰瘍の場合には粘膜保護作用を期待できるとともに、胃疾患による口臭をとる作用もある。

激しい胃痛は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の症状でもあるが、胆石症、急性胆のう炎、急性膵炎、腸閉塞、尿管結石、卵巣のう腫、子宮外妊娠などで起こることもある。

潰瘍の場合は、潰瘍の薬を用いれば効果があるが、原因不明の激しい痛みに対しては、その痛みを叫時的に止める救急鎮痛薬が必要となる。
キリキリとした痛み、いわゆる胃けいれんの状態の時には、まず鎮痙・鎮痛剤の配合された薬を服用して痛みとけいれんを止めて病院にかけつけることである。
このような、鎮痙・鎮痛剤の配合されている胃腸薬には、鎮痛鎮痙胃腸薬がある。薬で痛みが止まっても、安静を保ち、医師の診察を受けなければならない。そうでないと、激しい痛みの起こった原因がわからぬうちに、手術するにも手おくれという事態が起こりうる可能性がある。

胃下垂症・胃アトニー

胃弱の人にすすめたい、胃の働きをよくする薬と生活のポイント

俗に「胃弱」といわれ、太れないタイプの人がいる。ダイエットに苦しむ人から見れば全くうらやましい体質のように見えるが、医学的見地に立てば、あまり健康的とはいえない。
暴飲暴食をしなくてもなんとなく胃がもたれる。手で胃のあたりを叩くとピチャピチャという音がする 。こんな自覚症状のある人は胃下垂であることが多い。

日本人の約3分の1は、胃下垂があるといわれている。ただ胃が下がっていても、胃の機能が正常であるならば、不快な症状があらわれることはなく病気とはいえない。
胃下垂があって胃機能が低下し、いろいろな自覚症状を呈する胃下垂症の人は、である。胃下垂の人の半数以下の胃の型は、大きく分けると「釣り針型」と「牛のツノ型」の2つとなる。一般的に「牛のツノ型」はガッチリした体格の人に多く、「釣り針型」はやせた人に多い。

胃下垂の診断は、胃X線検査によりすぐわかる。胃下垂の人には胃アトニー(胃無力症) を合併して症状の出てくることが多いようである。

胃アトニーの症状としては、胃壁が弛緩して、たえず胃の張った感じが続き、少し食べてもすぐに満腹感になる場合が多い。
胃下垂症、胃アトニーがあって、胃弱を訴える人には、胃液の分泌と胃の運動をよくする作用を持った薬がよいわけで、さらに消化酵素が加えられているものが望ましい。
このような作用をもった胃腸薬としては、ガロニン錠、、ワクナガ胃腸薬Gなどがある。

こうした薬物療法とともに、「胃弱」の人は、精神療法、食餌療法が必要である。胃下垂があっても気にしてはいけない。胃下垂症の基本には神経症的な性格傾向、自律神経失調、無力性体質などが複雑にからんでいるのであって、これらが胃下垂症の発病症状、経過に影響を及ぼす。

小さなことにくよくよしないで規則正しい正常生活を心掛け、毎日全身の運動を実行し、疲れてぐっすり睡眠をとることである。食事は良質のたんばく質と糖質を消化のよい状態に調理して、1回量を少なく食べる。ミネラル、ビタミン類は野菜、果実より補給する。
食事の回数は1日に4回あるいは5回として規則正しくすることである。食後は30分間くらい横になると胃の消化と運動によい影響を与える。

感冒薬

ひとからうつる風邪とうつらない風邪

人がかかる病気のうちで、もっとも頻度が高いのが風邪で、年齢によっても差はありますが、1人が年間平均6回程度かかります。

風邪というと、冬の病気のように考えられがちですが、夏に流行するものもあり、季節とは無関係です。

咳、鼻水、喉の痛み、頭痛、そして発熱、食欲不振、全身の倦怠感、寒気、かぜの症状もさまざまです。

かぜは、いろいろな病原体で起こる上気道炎の総称で、単一の病気ではありません。風邪は、まず感染しないものと感染するものとに分けられます。感染しないかぜの原因には、寒冷、ほこり、ガスのような刺激が原因となるものと、鼻や気管支の粘膜になんらかの刺激があってアレルギーを起こしてかぜ症状になるものがあります。

寒冷、ほこり、ガスなどの原因によるかぜは、特殊な環境が発病のきっかけとなるので、その環境の改善が治療にも予防にもつながります。

アレルギーによる風邪は、特定の個人に頻発する傾向があり、特別の条件やアレルゲンが推定されることが多いので、その対策が治療や予防になります。

次に、「社会の迷惑」である感染する風邪についてですが、大きく分けてかぜ症候群とインフルエンザがあり、これらには病原体が存在します。8~9割までがウィルスによって発病し、細菌の二次感染により多彩な症状を起こします。

かぜの病原体と考えられているのは、インフルエンザウィルス、RSウィルス、アデノウィルス、ライノウィルスなどのウィルスとマイコプラズマならびに、溶連菌、肺炎球菌、肺炎桿菌、ブドウ球菌、インフルエンザ菌などの細菌です。

ウィルスの型は200種類もあるといわれ、また流行する型が毎年異なります。それゆえに免疫ができずに、何回も風邪をひいてしまうのです。

風邪・インフルエンザ | 薬を使わない食事療法(病気・症状別)

胃腸薬

胃の病気は「年齢」環境」と深い関係がある

「胃が痛い」と病院を訪れる人は、外来患者中もっとも多いことは、昔も今も変わりがない。自覚症状のない人を対象に胃集団検診を行った報告でさえ、受診者の85% の人に胃の異常が発見されている。なかでは胃炎がもっとも多く、ついで胃下垂、胃良性隆起性病変、胃・十二指腸潰瘍、胃悪性腫瘍などの順になっている。
胃炎 | 薬を使わない食事療法(病気・症状別)
胃の病気は年齢に関係する。

急性胃炎は年齢に関係ないが慢性胃炎の表層性胃炎と肥厚性胃炎は比較的若年層、青年期に多く、ガンに発展する可能性のある萎縮性胃炎は中老年に多い。また性別で見た場合、胃・十二指腸潰瘍は20代から増加し、女性よりも男性に多い病気である。

年齢層別に胃・十二指腸潰瘍の有病率を推定した報告によると、男性では55歳から64歳の年齢層でもっとも高くて約2%であり、女性では70歳から74歳でもっとも高く、その有病率は約1% という結果が発表されている。

胃の病気は環境にも影響される。胃潰瘍は都会で生活している人に多く、田舎の人には少ない傾向が見られる。それは職場の発生に精神的な要因が関係しているためで、欲求不満に悩まされている人、あるいは感情の起伏がはげしい人はこの病気にかかりやすい。

胃の病気は、季節によっても発生頻度が変わる。急性胃炎は夏に多く秋と春がこれにつぎ、冬は少ない。これは食べ物や飲み物、温度と湿度が関係するためで会食やパーティの機会が多くなると、それに比例して胃・十二指腸潰瘍で苦しむ人も多くなるようである。

胃・十二指腸の病気

胃・十二指腸の病気は次の4つのタイプに分けることができる。

  1. 胃・十二指腸そのものに変化のあるもの。急性胃炎、慢性胃炎、潰瘍、胃がんなど。
  2. 胃・十二指腸には病的変化がなくて、ほかの臓器に病気があり、これから反射的に胃腸障害があらわれる場合。脳疾患の時に起こる吐き気、嘔吐など。
  3. その病気の部分的な現象として胃腸障害を起こす場合。肺結核による食欲不振、白血病の場合の消化器粘膜よりの出血など。
  4. 機能的なもの。身体のどこにも器質的な病気がなく、正常な胃・十二指腸であるにもかかわらず、その機能に混乱が認められ、胃症状を呈するもの。これに属するものに胃神経症がある。その人の性格的なものと環境条件が関係している。

この4のタイプに入る胃の病気は最近ますます増える傾向にあり、ある報告では胃の病気の4分の1はこのタイプに属するという。
胃もたれ・胃痛・胸焼けは麹入り酵素

日本人と胃がん

数十年前の日本人の食生活は胃の負担が大きい食事内容で、胃の病気が多かった。現在ではたんばく質と脂質の摂取量が増加し、炭水化物は減って、栄養素摂取状況はおおむね良好と判断されている。

ただし、カルシウムについては、日本人は不足傾向。脂質は全エネルギーの25% を越えていて超過状態。昔多かった胃ガンの減少、そして大腸ガン、乳ガンの増加は、この食生活を含めた生活習慣(ライフスタイル)の変化によるとされている。

現在のところ胃ガンによる死亡は男女ともに一番多いが、年々減少しており肺ガンや大腸ガンが増えている。

原因により症状はさまざま

ひと口に胃の病気の症状といっても、その原因によってさまざまな症状を示す。

急性の食中毒、飲みすぎ、食べすぎの場合には、急に起こる上腹部痛、悪心、嘔吐などの症状がある。

慢性胃炎では長期間続いている食欲不振、胃のもたれ、上腹部の鈍痛などを伴うことが多い。

潰瘍では、周期的に出現する空腹時の上腹部の痛み、食後30十分頃の腹痛と胸やけ、酸っぱい胃液を伴ったげっぶ、ひどい時には吐血、黒色便(下血)貧血を起こすこともある。

胃ガンは、自覚症状からは早期発見できない。自覚症状の出てきた時点では、手術をしても手おくれになってしまっていることが多い。

手術をして治る早期胃ガンの人の半数は、特有な症状はなく、あとの半数の人には慢性胃炎の症状と同じ症状が認められる。食欲不振、胃のもたれなどの症状と吐き気が長期間続き、貧血が出現する。

胃のあたりを掌で圧迫した時に硬いシコリがあればガンの疑いが濃厚となる。しかしこのような症状の出た時点では、どうにも手がつけられないまでに進行した胃ガンになっている。そうなる前に食生活を摂生し、胃の健康を守りたい。

胃腸の仕組みと働き

胃腸のしくみや働きは次のとおりです。
胃は全体の6分の5は腹の真ん中を通る正中線より左側にあり、残りの6分の1は右側に位置する。胃に続く十二指腸は右上腹部にある。

食物はまず口腔、咽頭、食道を通って胃に入り、胃液と混和される。空腹時の胃は長さ15~20cm、幅8~10cmの袋状をしていて伸縮自在の器官である。食物が入ると膨らんで1200~1500mlの容積となる。

胃のおもな機能は、飲み込まれた食物を一時貯えて胃液と混和し、胃の嬬動でこびじゆうねまわしておかゆ状の靡汁として次の小腸(十二指腸、空腸、回腸)に適宜送り出すことである。

小腸の胃に続く部分を十二指腸と呼ぶ。長さは約30cmあり、胃から送られてきた靡汁には、さらに胆汁と膵臓から出る膵液が加えられる。十二指腸に続く部分は空腸で、ついで回腸となり、盲腸に接続されている。

本格的な消化吸収は小腸(十二指腸、空腹、回腸) で行われる。小腸に続く大腸に続く1.5mの長さで盲腸、結腸、直腸に区別される。大腸では食物の消化は行われず、主として水分の吸収と糞便の形成をする。大腸に続く肛門より食物は便となって排泄される。

この胃から肛門まで「長いパイプ」を「消化管」という。この働きは自律神経によってコントロールされている。

大腸の病気

腸疾患では、結腸の機能異常である過敏性大腸症候群が最も多く、以下内臓下垂症、急性腸炎、常習性便秘、開腹術後障害、大腸ポリープ、移動盲腸、移動性過長S字状結腸症、大腸ガン、細菌性赤痢、潰瘍性大腸炎などの順になっている。過敏性大腸や潰瘍性大腸炎は青年期に多くみられる。

大腸ポリープは中年以降に多く、大腸ガンは40歳代から急に増えてくる。食べ物が原因となる急性腸炎、食中毒、細菌性赤痢は夏に多い。腸疾患で一番多い症状は下痢である。便秘する場合もある。食中毒や細菌性赤痢では腹痛と発熱が認められる。いずれにしても、腸疾患では便の症状が重要である。ガスのためにおなかが張ることもある。

胃腸病別

風邪

風邪の徹底予防法

「風邪万病のもと」と昔苦からいわれていながら、風邪には決定的な治療薬がない。風邪の征服は人類の永遠の願いなのである。

ほとんどすべての感冒薬は、病原を退治できず、風邪に伴う諸症状を改善することしかできない。すなわち、感冒薬は、ワクチンを除き予防薬はないのであって、大部分が対症療法薬である。だから「卵酒」、「足湯」などの民間療法も行われている。
「風邪・気管支炎・扁桃腺炎」体の冷えと血液の汚れが原因 | 自分の免疫力で治す

したがって、風邪にかからぬように日頃から免疫力を高めておく必要がある。

  • 風邪をひている人になるべく接しないこと。というのは、風邪のほとんどが飛沫感染、つまり、風邪の人のくしゃみや咳を直接かぶって発病するからである。
  • うがいを根気よく実行すること。風邪は、マスクでは予防できない。ただし濃厚な飛沫を周囲にばらまかないための効果はある。
  • ふだんからうがいの習慣をつけておき、水道水でよいから外出後は必ずうがいをする。

    うがいは水か少し濃い番茶に少量の食塩を入れてするとよい。番茶は多量のタンニン酸を含み、喉の炎症を鎮める。舌を長くだして喉の奥まで水が届くようにやるのがコツ。うがいのほか、両の掌に生理的食塩水をとり、鼻腔に水を吸い、鼻腔を3~5回洗浄するのもよい。

    うがいとの併用は喉の粘膜を鍛え、かぜの予防に効果的である。

    市販のうがい薬は、殺菌や消炎を目的としており、口腔感染症、喉、扁桃の腫れ、痛み、炎症に効く。多くは濃厚溶液なので1回3~5滴おwコップ水60~100mlで薄め1日数回がらがらと喉の奥の患部に達するように行う。

  • つねに体力を養って身体の抵抗力を高めておくこと。乾布摩擦を行って皮膚を強化するのもよい。
  • 衣服の調節をすること。運動したあとは、乾いたタオルでよく身体を拭き、湿ったアンダーシャツなどは、すぐとりかえる。また気温の急変には、特に注意がいる。衣服や寝具の調節に心がけ、入浴後の湯ざめ、夜間、窓をあけたままうたた寝したり、暑いからといって裸で寝たりしてはいけない。
  • 不摂生な生活(夜ふかし、睡眠不足、過労) をしないこと。
  • 栄養のバランスのとれた食事をとる。毎日規則正しく、栄養価の高い食物を摂取する。ことに冬は熱量の消耗が大きいので、たんばく質、脂肪ならびにビタミンの豊富な卵、牛乳、果物、野菜をバランスよくとる必要がある。

以上のような注意を守ればたいていのかぜは予防できる。しかし、それでもかぜにかかってしまったら、その症状と経過に合わせて感冒薬を選ぶことが必要である。

感冒薬を濃いお茶で飲むのは誤り

一般に、クスリは水またはぬるま湯で飲む。くすりの種類によっては胃粘膜に強力に作用するものもあるし、飲み物の種類によっては相互作用をあらわす場合があるので、水やぬるま湯で飲むほうがよい。
しかし、昔から感冒薬は濃いお茶で飲むとよい効果をあらわすといわれている。

これはお茶の中にカフェインが入っていて、これが未輸血管拡張・中枢神経興奮作用を発ねむけそうかい挿するので発汗、解熱効果をひき起こし、眠気、疲労感を除き、気分を爽快にする科学的な理由からきたものである。

しかし現在の感冒薬は、昔の解熱剤単品の感冒薬と違って、総合感冒薬で、ほとんど抗ヒスタミン剤が入っており、眠気防止のためにカフェインが配合されているので、お茶で飲まないでいただきたい。感冒薬は消化管障害を起こすものが多いので、食後に水またはぬるま湯で飲むのがよい。ただし、お茶でうがいするのは効果がある。
コレラO157、インフルエンザにも効くカテキンの強力な作用

風邪のうちに薬で完全に治してしまえば長びかない

風邪は、なんといっても早いうちに治すことが一番である。普通の風邪の場合、症状として、鼻水やくしゃみが出る。ついで、喉の痛み、軽い咳状)、やや強い咳、痰(気管の症状) などの諸症状があらわれてくる。
「クシュンと出たら、すぐ風邪薬」、こんなCMが以前に流行したが、この程度の時は、安静と保温に気をつけて適切な栄養をとり、暖かくして寝ていれば、数日中に治る。

しかし、この忙しい現代に、「風邪ごとき」で何日間も休んでいられる人は少ないのかもしれない。「働き蜂」であればあるほど、つい無理をして本格的なかぜにおかされてしまう。したがって、咽頭の症状、気管の症状などがあらわれる以前の鼻腔の症状の段階で、抗ヒスタミン剤を配合した感冒薬を飲んだほうがよい。

鼻水や鼻づまりの、いわゆる鼻かぜ症状の時は、抗ヒスタミン剤を主として、これに鼻水の分泌を抑えるベラドンアルカロイド、充血炎症をとる塩酸フェニルプロパノールアミンを配合した鼻かぜ専用の内服カプセル剤がよい。
通常、成人で1日3回、1回1カプセルを内服する。

一般に日本人は、鼻腔の孔が小さいため、初期のかぜで鼻炎を起こすと、鼻腔内粘膜がうっ血して鼻がつまってしまう。

また、自動車の排気ガス、エ場の煙突から出る煤煙を毎日吸って鼻腔内粘膜が肥大してしまっているため、ちょっとしたかぜをひいても鼻がつまるし、鼻がつまるとかぜをひくという悪循環を繰り返している。

鼻炎を起こすと、精神的にも不安定になり、頭が痛かったり、重かったりして、仕事や勉強に身が入らなくなる。

また、鼻づまりの時、メンソレータムを少量綿棒で鼻腔に塗布し、蒸しタオルで鼻を温めるのも、鼻の通りをよくする1つの方法である。

アレルギー性鼻炎、じんま疹などにもよく効く抗ヒスタミン剤

抗ヒスタミン剤をかぜの初期に使用すると、かぜが悪くならないで治り、もしかぜの症状が完全にあらわれた時でも、それを軽快させるといわれている。

この抗ヒスタミン剤は、アレルギー症状の治療を目的としている。つまり、室内のほこり、花粉、かびなどの吸入性アレルゲンによるアレルギー性鼻炎、さばなどの食餌性アレルゲンによるじんま疹、ナイロン、ゴム製晶、皮革などの接触性アレルゲンによる皮膚炎、薬をアレルゲンとする薬疹などにかかった時、アレルギー反応の結果、体内に生ずるヒスタミンという物質を抑え、その症状をとり除く目的で使われたものである。

それが感冒薬に用いられてきたのは、この薬のもつ弱い副交感神経麻酔作用が、かぜによる鼻汁分泌の冗進を抑制するためである。

眠気を抑えた即効性のある「アレルギー・鼻炎薬」

また、抗ヒスタミン剤は、自律神経とともに中枢神経にも作用して、止痒効果や眠気作用がある。そのため、抗ヒスタミン剤の配合された感冒薬を飲むと、人によってはひどい眠気を催すので、自動車の運転や危険な機械の操作には注意を要する

本格的な風邪にかかったら総合感冒薬

2~3日前に鼻水、くしゃみなどの症状があったが、たいしたことはないと思っているうちに、咽頭の症状、気管の症状があらわれ、頭痛、関節痛、筋肉痛などが起こってきたら、本格的な風邪と考えて間違いない。

普通のかぜでは、熱がないことが多く、まれにあっても、せいぜい37.2~37.3程度の微熱である。

しかし、本格的な風邪にっかると、高熱が出て、咳や痰疾も出る。このような時は、あらゆるかぜの症状に効果がある総合感冒薬を用いる。
長い間親しまれてきたアスピリンには胃腸・肝臓障害や薬物アレルギー(アスピリンぜんそく)の問題が起こってきた。最近ではライ症候群発症への関与が疑われている。この症候群はアスピリンを小児に投与した場合、急に高熱、全身痙攣、意識障害、肝障害などを発症するといわれている。

喉の痛みを和らげるトローチ

風邪の症状で喉が赤く腫れて痛む時はウィルスまたは細菌性咽頭炎、扁桃炎にかかっている。初期のうちにうがい薬でうがいを励行し、もし発熱したら感冒薬を服用すれば、症状は楽になり治りも早い。うがいが面倒という人はトローチ剤を用いるとよい。

トローチ剤は市販のうがい薬と同じように、殺菌剤、消炎剤、芳香剤、甘味剤を配合したドロップ状のもので、口中にふくみ、噛むことなく徐々に唾液で溶かして、その溶解薬が口うるお内炎、咽頭炎、扁桃炎の炎症患部の粘膜を潤して薬効を発揮するものである。

症状によっては、医師の診断を受けて、抗生物質かサルファ剤の治療を受ける。抗生物質は、要指示医薬品なので、医師の指示書によって薬局で購入し、医師、薬剤師の指示で治療する。

抗生物質はある一定期間服用しなければいけない

抗生物質の服用時間のについて。たとえば、6時問おきに1日3回飲むように指示されたとして、その時間が真夜中になった場合。このような時は、夜6~8時頃に飲み、次に寝る前の22~24時頃に飲めばよい。その次は真夜中ではなくて、翌朝6時頃飲む。この程度の時間のズレは、あっても治療上はかまわないのである。

抗生物質を、6時間ごととか、4時間ごととか時間を決めて飲むのは、有効血液濃度を保つため。つまり、病気を起こしている臓器に薬の量を有効に維持するためである。

咳がはげしい時、とまらない時の対処方法

かぜをひいたようだが、頭痛も熟もなく咳だけの時もある。こんな場合には、解熱剤の入っていない鎮咳専用薬を使用するとよい。
ダスモック は、タバコや排気ガスなどで、せき・たんが続く際の薬。漢方処方「清肺湯(せいはいとう)」が気管支粘膜の汚れを取り除きながら、せき・たんをやわらげる。気管支の状態を正常に近づけ、呼吸を整える。

咳がひどい時には新ブロコデせき止め液液剤が甘くて飲みやすく速効性がある。年齢に応じ計量カップで正しく計り、水でうすめて飲む。
生薬系の龍角散はキキョウ末、キョウニン未、セネガ末、カンゾウ末を配合した散剤で、咳、疾、喉の炎症によい。軽い咳症状に効果的。

はげしい咳と高熱があって気管支炎を起こした時は、抗生物質を医師の指示にしたがって併用したほうが安全。

市販の咳止め専用薬と総合感冒薬の併用は薬の配合成分が重複し、中毒の原因になったりするので厳重に戒めたい。

39度以上の熱がでたら

39~40産もの高い熱がでることが往々にしてある。かぜの二次感染で、咽頭炎、扁桃炎、気管支炎、肺炎などを起こした場合にみられる。またインフルエンザにかかった時にも、急に熱がでる。

風邪で、もし3日以上も熱が下がらず、どうもおかしいと感じたら、すぐ医師にみてもらおう。細菌による二次感染が加わっていることが多い。二次感染には、抗生物質が非常によく効く。しかし、抗生物質はすべて医師の指示がなければ使用できない。

病院を受診することができない場合は、電話で病人の症状を話してかかりつけの医師の指示を受け、薬局で抗生物質を買うことができる。こんな場合でも、次の日には必ず病院を訪ねるべきである。

抗生物質は、やたらと自分勝手な服用をさけ、医師もしくは薬剤師と相談して、正しい用い方をすることが望ましい。

夏風邪にかかってしまったら

一般に、風邪は冬にかかるものだと思われているようだが、意外と夏にも多い。特に春から夏、夏から秋のような季節の変り目には、夜と昼間との温度差が著しく、つい油断して風邪をひく。世間では、「夏かぜは○○がひく」などというが、誰でも夏かぜにかかる。夏風邪の原因となるウィルスは、アデノウィルス、コクサッキーウィルス、エコーウィルスなどで、湿度が高いほうを好み、ふだん喉などに住みついていて、温度の急激な変化が身体の抵抗力を弱めた時に活躍しだし、風邪を起こす。寝冷え、湯ざめ、クーラーなどが誘因になる。

夏の風邪、冬の風邪大いに違うところは、「腹にくる風邪」であり、腹痛や下痢を伴う点である。

また、アデノウィルスによる夏かぜは、プール熱などともいわれ、プールなどで感染し、高熱を発して目の結膜の充血、流涙、喉の痛み、咳などの症状を呈する。夏風邪治療は、冬のかぜに準じて行えばよい。

夏風邪の時大切なことは、栄養の補給であり、ビタミン剤の服用も効果がある。夏は、伝染病や食中毒の多い時期だけに、発熱、頭痛、全身倦怠感といったかぜと同じような症状を示したからといって、必ずしもかぜでなくて、他の病気であることもある。肺炎を併発することもあるので、38鹿以上の高熱が続く時には速やかに受診する。

幼児なら甘いシロップ

「大人がくしゃみをすれば、幼児は気管支炎を起こし、赤ん坊は肺炎を起こす」というたとえがある。

抵抗力のない小児では、細菌による二次感染が起こりやすい。二次感染の症状があらわれたら、すぐ適切で充分な量の抗生物質を与える。抗生物質の使用は、医師の指示によらねばならないので、小児科専門医にみてもらうことが望ましい。

子供の場合、特別に小児用に作られた感冒薬を用いる必要がある。乳幼児には、純漢方薬剤の宇津救命丸樋屋奇応丸などがある。いずれも多種の漢方生薬を、仁丹よりも小さな丸薬にしたもので、母乳あるいはミルクと一緒に飲ませることができ、風邪によし、熱によし、胃腸によしで、いろいろな症状に効くので重宝である。

幼児、小児の感冒薬は、甘くて飲ませやすいシロップ剤や液剤が適している。感冒薬の成分内容はおとなの感冒薬とほとんど同じだが、特に幼児・小児用に調節されている。計量カップで年齢に応じて計って飲ませることに注意。

学童期になれば顆粒や錠剤が飲めるので、選択肢が増える。子供は特に春さきに咳のでるかぜをひきやすい。咳症状のひどい時は、子供用 咳止めシロップなどが甘くて飲みやすく、咳もよく止まり効果的。
熱があっても、子供の表情が明るく元気ならば、まず肺炎の心配はない。口や皮膚が乾いていなければ脱水症の恐れもない。反対に、熟もないのに食欲もなく、ぐったりしている時は大事に至らないうちに、すぐ医師の診断を受けたほうがよい。

インフルエンザ

インフルエンザには特効薬がない

インフルエンザ(流行性感冒)にかかると、急に高い熱がでる、身体のふしぶしや筋肉が痛む、鼻血や血疾がみられる、などのかなり強い症状があらわれる。

潜伏期間は1~2日である。感染の機会があって明くる日には軽いかぜの症状がでてくる。すでにインフルエンザに免疫のある人は免疫の強さに応じて症状がでる。

このような時には、健康な大人なら、普通の風邪と同様に栄養をとり安静と保湿に気をつける。

もし熱が蒔く筋肉痛がひどければ、解熱剤(あるいは鎮痛剤)を飲んでおく。それで3日以上も熱が下がらない場合は病院を受診する。

老人や子供、心・肺に病気があるなどの虚弱体質の人は、はじめから解熱剤と一緒に抗生物質を服用して、二次感染を防いでおく必要がある。したがって、早めに医師にかからなければいけない。

現在、インフルエンザウィルスに特効的な薬はない。

インフルエンザ予防薬としては、インフルエンザHAワクチンがある。ワクチンは生体に投与することによって、病原体に対して免疫抗体を産生させ、生体の感染を防ぐものである。
以前のインフルエンザワクチンは、ウィルス粒子をそのまま不活化したもので、副作用も強かった。今のワクチンはウィルスを鶏卵内で移植増殖し、さらに精製濃縮してエーテルでウィルス粒子を分解し、ウィルスの構成物質から毒性のある脂溶性物質をとり除き、表面抗原(HA)をとり出し、副反応の少ないワクチンとしている。

インフルエンザウィルスは大別するとA 、B 、Cの3つの型があるが、C型は散発的な感染が起こる程度であるからワクチンに入れない。大きな流行の原因のもととなるA型株B型株のウィルスの混合ワクチンが現在のものである。新型ウィルスの登場で、特に急いで予防接種による対策がなされる時は、新型ウィルスの単独ワクチンも製造される。

インフルエンザワクチンの罹患予防効果率は、平均して60~80%程度であるが、現在、実施されている学童予防接種は学童の羅患の予防だけでなく、一般社会への流行の拡大防止の役割もある。

100% の予防効果率が発揮できない理由としては、ワクチンを作ったインフルエンザとは別株のウィルスが流行していた場合と、ワクチンの予防接種を受けても充分な免疫抗体が身体の中に存在しない場合、の2つが考えられる。HAワクチンの注射が早すぎても遅すぎても、抗原であるウィルスと免疫抗体はドッキングできないし、もともと抗体ができてこない場合もある。

副反応の重症例は1440万人に1人の割合と報告されている。

インフルエンザHAワクチンを受けてはいけない場合もあるので、接種を受ける際には医師に相談すること。