妊娠

つわりには漢方薬がよく効く

妊娠の5~6週頃にはじまる悪心、嘔吐は「つわり」である。初めての妊娠では症状は強く、経産婦では症状は軽くなる。普通の悪心、嘔吐とは違って、早朝空腹時に起こることが多い。

妊娠中・出産後の不快な症状

たいていの場合、16週頃になると自然に消えるが、なかには重症化して嘔吐が続き、全身状態の悪くなることもあり、妊娠悪阻と呼ばれている。胎盤の絨毛より出てくるいろいろな物質が、母体の内分泌、代謝、自立神経に作用して失調をもたらすとされている。

漢方薬が良く効く。畑の中などによく生えてくる半夏を主剤としたものが多い。
小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)は、つわりの初期に頻繁に与えるとよい。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)は咽頭部の異常感や、胸がつかえるなどと訴える、神経質な、あるいはヒステリーの性格の方に適した薬となっている。

胎児・母体への薬の副作用について

母体と胎児、環境と胎児の関係を研究する新しい医学の分野に胎児学(出産前医学)がある。この方面の医学の進歩にはめざましいものがある。

わが国には昔から「胎教」という言葉があり、妊娠中の婦人の心得として民間療法的な色の濃い存在であったが、今や科学的な裏づけがなされつつある。

一般的に大きな騒音、叫び声、怒号、母親の感情の動揺で胎児脈拍数はぐんと多くなる。母親の喫煙、アルコール摂取が胎児に悪い影響を与えることもはっきりしてきた。

妊娠中に服用した薬の副作用は、母体と胎児の両方について考えなくてはならない。さて妊娠中の母体の生理的変調は、胎盤と胎盤ホルモン、胎児の容積によるもので、代謝の克進、循環器と内分泌系の不安定、血琴量の増加などが起こっている。

薬の作用ならびに副作用も少量で出てくることもある。妊娠中の糖尿病の薬としてインスリン投与を行うことがあるが、低血糖におちいらないために普通に投与するよりも少量から始めるのは医師の常識である。

その他、睡眠剤、鎮痛剤、感冒薬なども服用は極力避け、服用する場合には医師の指示に従って少量を用いる。予防接種は妊娠していないときに受けるべきで、特に生ワクチンの接種は受けない。

胎児への薬の副作用で問題となるのは、いろいろな器官の発生する妊娠の始まり(着床) から3ヶ月の終わりまでの時期(胎芽期、器官発生期) である。
この時期に母体の服用した薬の障害は形態異常、すなわち「先天奇形」となってあらわれることがある。妊娠中期(器官形成期)からは、胎児の薬に対する感受性は低下はしても、なお薬の傷害はいろいろな器官の機能異常をもたらす。

したがって、流産、発育遅延、臓器機能障害、知能障害、病弱、短命などの異常が出てくることもある。次にあげるものは、妊娠初期に用いると催奇形作用の危険性がある薬である

検査薬を利用される場合には、「使用上及び取扱い上の注意」を繰り返して読んでいただきたい。なお妊娠していなくても結果が陽性に出ることもあるし、陰性でも安心できないこともある。

避妊薬、ピルとIUD

近頃の家族構成をみると、ひとりっ子の家庭が多い。それぞれの家庭で住宅事情や金銭の面を考えて受胎調節が実行されていることを物語っている。
受胎調節として最近いろいろな意味で問題となっているのがピル(経口避妊薬)とIUD(子宮内避妊器具) である。

ピルの服用は今や全世界で行われていて、その数は5000万人以上に達するといわれている。わが国では肝障害、血液凝固系への影響、妊娠した場合の胎児への影響などが問題となって、一般的ではない。

月経困難症や卵巣機能不全、月経周期の調節のためにピルを医師が渡しているのが現状である。ただし、近い将来には経口避妊薬として承認される状況となった。

ピルにはいろいろな種類があるが、合成黄体ホルモンと合成卵胞ホルモン系の合剤(低用量ピル)が主流を占めている。低用量ピルがよく使われており、以前に比較すると副作用は減少して、そのうえ効果は抜群である。

服用は1日1錠、月経周期の第5日から服用を開始して22日間続ける。しかし乳ガン、子宮ガン、血栓症、肝疾患の患者ならびに疑いのある場合には服用してはならない。
もちろんのことであるが、服用前には医師の診察を受け、指示に従うことが大切である。IUD はリングの名で知られている。婦人科医師による子宮内挿入と定期的検査を受けなくてはならない。

全世界の使用者数は5000万人以上と推定されている。わが国で使用許可になっているリングは、まだまだ少ない。ある産婦人科医の話によれば、「IUDを装着している女性が100人いれば、1年間にそのうち2~3人は妊娠している」とのことで完全な避妊はのぞめない。