胃腸薬

胃の病気は「年齢」環境」と深い関係がある

「胃が痛い」と病院を訪れる人は、外来患者中もっとも多いことは、昔も今も変わりがない。自覚症状のない人を対象に胃集団検診を行った報告でさえ、受診者の85% の人に胃の異常が発見されている。なかでは胃炎がもっとも多く、ついで胃下垂、胃良性隆起性病変、胃・十二指腸潰瘍、胃悪性腫瘍などの順になっている。
胃炎 | 薬を使わない食事療法(病気・症状別)
胃の病気は年齢に関係する。

急性胃炎は年齢に関係ないが慢性胃炎の表層性胃炎と肥厚性胃炎は比較的若年層、青年期に多く、ガンに発展する可能性のある萎縮性胃炎は中老年に多い。また性別で見た場合、胃・十二指腸潰瘍は20代から増加し、女性よりも男性に多い病気である。

年齢層別に胃・十二指腸潰瘍の有病率を推定した報告によると、男性では55歳から64歳の年齢層でもっとも高くて約2%であり、女性では70歳から74歳でもっとも高く、その有病率は約1% という結果が発表されている。

胃の病気は環境にも影響される。胃潰瘍は都会で生活している人に多く、田舎の人には少ない傾向が見られる。それは職場の発生に精神的な要因が関係しているためで、欲求不満に悩まされている人、あるいは感情の起伏がはげしい人はこの病気にかかりやすい。

胃の病気は、季節によっても発生頻度が変わる。急性胃炎は夏に多く秋と春がこれにつぎ、冬は少ない。これは食べ物や飲み物、温度と湿度が関係するためで会食やパーティの機会が多くなると、それに比例して胃・十二指腸潰瘍で苦しむ人も多くなるようである。

胃・十二指腸の病気

胃・十二指腸の病気は次の4つのタイプに分けることができる。

  1. 胃・十二指腸そのものに変化のあるもの。急性胃炎、慢性胃炎、潰瘍、胃がんなど。
  2. 胃・十二指腸には病的変化がなくて、ほかの臓器に病気があり、これから反射的に胃腸障害があらわれる場合。脳疾患の時に起こる吐き気、嘔吐など。
  3. その病気の部分的な現象として胃腸障害を起こす場合。肺結核による食欲不振、白血病の場合の消化器粘膜よりの出血など。
  4. 機能的なもの。身体のどこにも器質的な病気がなく、正常な胃・十二指腸であるにもかかわらず、その機能に混乱が認められ、胃症状を呈するもの。これに属するものに胃神経症がある。その人の性格的なものと環境条件が関係している。

この4のタイプに入る胃の病気は最近ますます増える傾向にあり、ある報告では胃の病気の4分の1はこのタイプに属するという。
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日本人と胃がん

数十年前の日本人の食生活は胃の負担が大きい食事内容で、胃の病気が多かった。現在ではたんばく質と脂質の摂取量が増加し、炭水化物は減って、栄養素摂取状況はおおむね良好と判断されている。

ただし、カルシウムについては、日本人は不足傾向。脂質は全エネルギーの25% を越えていて超過状態。昔多かった胃ガンの減少、そして大腸ガン、乳ガンの増加は、この食生活を含めた生活習慣(ライフスタイル)の変化によるとされている。

現在のところ胃ガンによる死亡は男女ともに一番多いが、年々減少しており肺ガンや大腸ガンが増えている。

原因により症状はさまざま

ひと口に胃の病気の症状といっても、その原因によってさまざまな症状を示す。

急性の食中毒、飲みすぎ、食べすぎの場合には、急に起こる上腹部痛、悪心、嘔吐などの症状がある。

慢性胃炎では長期間続いている食欲不振、胃のもたれ、上腹部の鈍痛などを伴うことが多い。

潰瘍では、周期的に出現する空腹時の上腹部の痛み、食後30十分頃の腹痛と胸やけ、酸っぱい胃液を伴ったげっぶ、ひどい時には吐血、黒色便(下血)貧血を起こすこともある。

胃ガンは、自覚症状からは早期発見できない。自覚症状の出てきた時点では、手術をしても手おくれになってしまっていることが多い。

手術をして治る早期胃ガンの人の半数は、特有な症状はなく、あとの半数の人には慢性胃炎の症状と同じ症状が認められる。食欲不振、胃のもたれなどの症状と吐き気が長期間続き、貧血が出現する。

胃のあたりを掌で圧迫した時に硬いシコリがあればガンの疑いが濃厚となる。しかしこのような症状の出た時点では、どうにも手がつけられないまでに進行した胃ガンになっている。そうなる前に食生活を摂生し、胃の健康を守りたい。

胃腸の仕組みと働き

胃腸のしくみや働きは次のとおりです。
胃は全体の6分の5は腹の真ん中を通る正中線より左側にあり、残りの6分の1は右側に位置する。胃に続く十二指腸は右上腹部にある。

食物はまず口腔、咽頭、食道を通って胃に入り、胃液と混和される。空腹時の胃は長さ15~20cm、幅8~10cmの袋状をしていて伸縮自在の器官である。食物が入ると膨らんで1200~1500mlの容積となる。

胃のおもな機能は、飲み込まれた食物を一時貯えて胃液と混和し、胃の嬬動でこびじゆうねまわしておかゆ状の靡汁として次の小腸(十二指腸、空腸、回腸)に適宜送り出すことである。

小腸の胃に続く部分を十二指腸と呼ぶ。長さは約30cmあり、胃から送られてきた靡汁には、さらに胆汁と膵臓から出る膵液が加えられる。十二指腸に続く部分は空腸で、ついで回腸となり、盲腸に接続されている。

本格的な消化吸収は小腸(十二指腸、空腹、回腸) で行われる。小腸に続く大腸に続く1.5mの長さで盲腸、結腸、直腸に区別される。大腸では食物の消化は行われず、主として水分の吸収と糞便の形成をする。大腸に続く肛門より食物は便となって排泄される。

この胃から肛門まで「長いパイプ」を「消化管」という。この働きは自律神経によってコントロールされている。

大腸の病気

腸疾患では、結腸の機能異常である過敏性大腸症候群が最も多く、以下内臓下垂症、急性腸炎、常習性便秘、開腹術後障害、大腸ポリープ、移動盲腸、移動性過長S字状結腸症、大腸ガン、細菌性赤痢、潰瘍性大腸炎などの順になっている。過敏性大腸や潰瘍性大腸炎は青年期に多くみられる。

大腸ポリープは中年以降に多く、大腸ガンは40歳代から急に増えてくる。食べ物が原因となる急性腸炎、食中毒、細菌性赤痢は夏に多い。腸疾患で一番多い症状は下痢である。便秘する場合もある。食中毒や細菌性赤痢では腹痛と発熱が認められる。いずれにしても、腸疾患では便の症状が重要である。ガスのためにおなかが張ることもある。

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