肝障害の薬

アルコールにやられてしまった肝臓には

この項目では外因性による肝障害についてです。それにはアルコールによるものと薬剤による肝障害がある。

アルコール性脂肪肝は1日一升(日本酒換算) 2日間、あるいは1日6合、7日間の飲酒で生じ、禁酒と高たんばく食を実行すると二週間でほぼ全治する。

アルコール性肝硬変は平均的日本人では、日本酒換算1日5合以上を飲み続けて10年以上たつと、その常習飲酒者の70%は肝硬変を含む非可逆性慢性肝障害を生ずるとされている。
また急性アルコール性肝炎は禁酒にかかわらずその30%は肝硬変に移行するといわれる。

治療の原則は、

  1. 禁酒
  2. 食事療法
  3. 食後1時間の安静
  4. 薬剤の服用

薬の効果は1~3に比較すると効果はあまり期待できない。

食事療法は高たんばく、高カロリー食(体重1kg当たり35キロカロリー以上、たんぱく質1.5キロ以上)を、やせているアルコール性肝炎、肝硬変の患者にすすめる。肝硬変→肝ガンを防ぐように努める。

女性の社会進出の機会が多くなり、飲酒習慣が拡がるにつれて女性のアルコール肝障害が増加している。女性は男性にくらべてアルコールに対する感受性が3倍も高いので、肝障害も3倍起こり易いことになる。
酒については男女同権ではない。女性のアルコール中毒患者は増えてきている。

細菌によって起こった感染症によく効く抗生物質のような特効的肝臓薬はない。近年薬の再評価が行われ、「二重盲検法」によってある程度の薬効が確かめられて、一般肝庇護剤として評価の固まっているものには、少しああるが、一般用医薬品としては製品化されていない。
薬局で買うことのできる肝臓薬としては小柴胡湯(しょうさいことう)などの漢方薬になる。
アルコール性脂肪肝には、その根底には脂質代謝異常が脂質異常症(高脂血症)の治療に使われる薬についてはこちら。

薬が健康を害するケース「知らないうちに肝臓を痛めつけていないか」

薬の服用によって起こる肝障害は近年、頻発している。これは薬の乱用によるものと思われる。肝障害を起こす薬は非常に多く、あらゆる薬剤に肝障害を起こす可能性があるといわれているほどである。

薬剤性肝障害の自覚症状としては、発熱、皮膚のかゆみ(掻痒感)、皮膚粘膜の黄染(黄疸)発疹、じんま疹様、湿疹が認められることが多く、ほとんどの場合、服用開始より8週間以内に症状が出てくるといわれている。

薬剤性肝障害の治療は、原因となった薬の服用を中止することである。多くの場合、服用中止で治癒するが、時として劇症化、慢性化することもある。
場合によっては服薬を中止できないこともあるので、日常生活の節制を心掛け医師の指示に従って経過観察となることもある。薬剤性肝障害にも特効薬はない。
般的肝庇護剤の服用は補助的なものと心得ておいていただきたい。

外因性による肝障害は比較的治療が容易と考えられるが、肝腎なことは、あなた自身の病気に関する知識と実行、決断力が治癒に大きな比重を占めていることである。

禁酒あるいは節酒(日本酒に換算して1合)を続け、薬剤服用が長くなる場合には4つの自覚症状(発熱、皮膚掻梓感、黄疸、発疹)に目を向けて、月に1回は肝機能検査、血液像検査などを受けることである。

肝臓の病気としては他にも急性肝炎、慢性肝炎肝硬炎、肝ガンなどがあるけれども、これらの肝疾患は医師の診察診断、治療に従うことが基本となる。

肝臓の検査を受ける人

最後に肝臓の検査について。

肝機能検査には非常に多くの項目がある。その中の代表的な3項目と検査結果の解釈の仕方、結果の読み方についてまとめたものが次の表である。GOTもGPTも肝臓の細胞の中にある酵素である。

肝臓に障害があると血液中に流れ出てくる、γ-GTPもやはり酵素の名前で、酒の飲み過ぎを調べる。こうしたポイントとなる血液検査で、肝臓の異常が発見できる。

あなたが人間ドックなどで肝機能検査を受けた時には、検査成績の解釈に役立ていただきたい。肝臓が悪くなると、GOT、GPTが増加する。ただし病気によってその増加の程度に差が出る。その比を求めてみると、それぞれの肝臓病によってより大きい場合と小さな場合があり肝臓病の鑑別診断に役立つ。
肝臓を労るに週2日の休肝日が必須

肝臓の薬

肝臓の働きと病息の原因

大切なことや、大事なことを肝腎要という言葉であらわすように、人体にとって肝臓は生命維持のための大事な臓器である。肝臓病で死亡する人は年間3万人以上といわれている。

慢性肝炎罹患者はわが国では120万人以上と推定されていて、その75%はウィルスによる肝炎(B型・C 型など)で、20% がアルコール性肝炎である。

肝臓病の原因には、外来性と内因性がある。身体の外からやってきて肝臓を悪くする外来性の原因として微生物(ウィルス性、細菌など)と化学物質(薬剤、アルコールなど) が挙げられる。

身体の内部に異常があって、肝臓を悪くする内因性のものには代謝、自己免疫、腫瘍などがある。ただしこの外的、内的原因の2つは、相互に密接な関係を持っている場合がある。

肝臓の働きは、大きく次の2つの機能に分けられる。

  1. 身体に必要な物質(たんばく質、血液凝固因子、胆汁、血液成分) を生産し、かつ蓄積しておくこと(糖、たんばく質、脂肪)。
  2. 有害物質を解毒すること。

つまり物質の代謝が盛んな器官ということである。肝機能は年とともに低下をきたすものであるが、肝臓の丈夫な人は、身体中の組織を活性化させ、いつまでも若々しい皮膚を保つことができて、美肌の持主ということになる。アルコールが体内に吸収されると、速やかにアルコールを分解する働きを肝臓が担うことになり、肝臓の中の酵素の作用で、アルコールは酸化を受け、アセトアルデヒドから酢酸を経て、さらに炭酸ガスと水とに分解して体外に排出される。

肝機能の優れた人は、酒を飲んでも悪酔いしないですむ。肝機能検査に異常はなくてもお酒を飲むとすぐ赤くなって気分の悪くなる人がいる。このような酒に弱い人は日本人では約半数であるとされている。
アルコールが肝臓で酸化されて生じたアセトアルデヒドがこの悪酔いの元凶で、このアセトアルデヒドを分解する酵素、アセトルデヒド脱水素酵素が充分でないと悪酔いすることになる。

西洋人ではこの酵素のない人は10%くらいといわれていて酒に強い人が多い。したがってアルコール中毒者も多くて社会的問題としてとりあげられている。

日本人では、ありがたいことに、この酵素のない人は50%にも達するので、アルコール中毒者は少ない。反対に、肝機能の悪い人は疲れやすく、吐きっぼい。

酒類や脂肪類の食物を受けつやつけないようになり、顔にシミができたり、カサカサした肌になって艶がなくなる。また右の肋骨の下が張るような、少し痛いような不快感におそわれる。

これは、いわゆる肝障害を伴う胃炎を起こすことが多い。こんな自覚症状のある人は、一度病院で尿や血液の生化学的な検査を受けて、病気か病気でないかを調べたほうがいい。

内臓の疾患では、胆のう結石、腎結石、胃けいれんなどをのぞくと、痛みを伴うことは少ない。痛まぬからこそふだんからの注意が肝要で、少しの変調にも目をむけてほしい。

肝臓の病気の人は、過労を避け、休養と睡眠時間は充分にとり、脂肪食はなるべく避けて消化のよい新鮮なたんばく質を充分に摂り、アルコールを断ち、不必要な観察を続けてゆくことである。

市販の強肝剤は効果があるのか

市販の強肝剤といわれているものには、肝機能を促進するもの、胆汁の分泌をよくするもの、肝臓を保護し働きをよくするものなどがある。
しかし肝臓という臓器は複雑で、作用についても、疾患についても、まだわからぬ点が多いのが実情である。

強肝剤の服用でこと足りると思うととりかえしのつかないことになる。現在市販されているいわゆる強肝剤は、肝臓に対する作用だけでなく、ビタミン剤、胆汁分泌促進剤、あるいは多種類の栄養剤が配合されており、疲労回復、二日酔い、食欲不振などのほかにつわり、食中毒、じんま疹などの解毒薬としても使われている。
脂肪肝、肝炎、肝硬変を追放するのは「強肝草エキス」

幼児の胃腸病

幼児の食あたり

幼児は、おとなと違って食べ物に対して節制やわきまえがないため、往々にしてブレーキがきかなくなる。食事を食べずにお菓子や果物ばかり食べたり、寝る前に冷たい飲み物を飲んだりして、胃腸に悪く、消化不良を起こすもとを仕込んでいる。

また、夏には寝冷えをするし、冬は風邪から下痢を起こすことがよくある。幼児は、病気になると進行が早いので、食中毒や胃腸障害で発熱したら、医師の診断を仰ぎ、適切な治療を受けなければならない。

子供特有の怖い病気は多い。しかし通常の食あたりの場合には、絶食と安静を守りながら用量を説明書でよく理解して、適量の胃腸薬を飲ませるとよい。
まず消化剤の配合されたものにはタカヂア錠がある。5歳前後の小児ならば1回1錠で消化不良、食べすぎなどの場合によい。

ワカ末錠は塩化ベルベリンが主剤で下痢を止めるにはよく使われている。

同じような下痢止めには大正止瀉薬小児用がある。

乳酸菌製剤としては新ビオフェルミンS細粒%83%B3S%E7%B4%B0%E7%B2%92/がある。

整腸剤として昔から使用されたもので、軽い下痢、食あたりによい。ミヤリサンアイジAは、宮入菌末にビタミンが配合された顆粒状の薬剤で、幼児の軟便、緑便などの消化不良に有効である。

子供が何度も吐いた場合

幼児期、学童期には、しばしばいわゆる自家中毒がみられる。この病気はある日突然にはじまり、嘔吐を繰り返す。アセトン血性嘔吐症の病名がつけられているようにケトン血症、ケトン尿を伴う。

これは嘔吐によって起こった代謝の失調を意味しているが、嘔吐の止まらない場合には脱水症状が強くなり、輸液をしなくてはならないので、医師の診断、治療にまかせるべきである。水やお茶が飲めて安静にすれば吐かなくなる程度の症状ならば、家で寝ているだけで自然に治る場合が多い。

幼児の便秘を治療する場合に注意すべきこと

幼児の便秘には、町粁般的に下剤を用いず浣腸をする。乳児では、果汁などで便通を調整するのが一般的なやり方だが、急性腸炎などで発熱している時は、浣腸をして直腸付近の便の性状を見ておくとよい。

イチジク浣腸などがある。グリセリンを含み、腸管の嬬動を高めるように働く。

慢性便秘

3日以上便秘が続くのは身体にも美容にもよくない

一般に、男性に比べて女性に便秘の人が多い。女性は運動不足に加えて、腹部の脂肪が厚いために、大腸の運動が低下し、無力化するためである。

「無力性常習便秘」を起こす。このような人は、環境が変わるだけでも便秘となる。慢性便秘には、弛緩性便秘とけいれん性便秘があるが、大多数の人は弛緩性便秘である。

また便秘には、慢性便秘のほかに大腸の器質的異常が原因のこともある。便秘は気分的に憂鬱なだけでなく、食欲不振、めまい、不眠、肌あれなどの症状を起こし、体調のバランスもくずれるので、仕事の能率はおちるし、美容上にもよくない。

3日以上便通のない時には、便秘の原因をたしかめ、治療した方がよい。便秘の治療は、緩下剤を服用するか、浣腸を行う。

慢性の便秘によく効く漢方薬配合のクスリ

便秘・下痢

慢性便秘(無力性常習性便秘)の人は、毎日の生活を規則正しく、全身の筋肉を使った運動をするとよい。運動は消化器機能を完進させる働きをする。食事は食物繊維 の多い野菜、果物と水分を多くとる。
ハチミツ、冷たい牛乳なども効果的である。できるだけ、1日1回の規則正しい排便の習慣をつけ、とくに朝あるいは夜の決まった時間に排便する習慣をつける。
ただし便意のないのに長時間頑張って腹圧を高めることは、痔の原因になるので用心する。
便秘薬を使わない自然排泄にこだわるなども参考に。

それでも効果のない慢性便秘には、緩下剤といわれるゆるやかな作用をもった下剤が用いられる。服用して5~8時間ぐらいすると、便通があってスッキリする。緩下剤には漢方薬を主としたものが多い。

七ふくは、漢方薬のオウレン、ダイオウ、オウゴン、アロエを成分とし、大腸を刺激してその運動を促進して便通を起こす。

複方毒掃丸にはダイオウ、センキュウ、カンゾウ、サンキライ、コウボク、エイジツなどの漢方薬が配合されていて、おだやかな作用で排便を促進する。

便秘を治す生活習慣

排便習慣は便秘の場合に特に大切である。朝食は量質ともに充分にとり、食後10~30分に起こる便意を抑えないでトイレに行く習慣をつけることが大切である。

胃に食物が入ると、腸の蠕動運動が強く起こり、これが便意となる。日常生活での節制( 睡眠、食事、仕事、運動の適量) を心掛けるならば、一定の時刻になると便意が強くなって、排便習慣がついてくる。

時間ぎりぎりまで寝ていて、朝食はパンひと切れですませ家を飛び出てゆく人には、朝食後の排便習慣は無理である。少なくても家を出る一時間前には起床する習慣がまず必要である。
内外のストレス等による、けいれん性便秘の食事は腸管に刺激的に働く食品を避ける。刺激的な食品としては、香辛料、消化の悪い食品を挙げることができる。
便秘になる代表的な原因は

便秘薬を使えない人にすすめたい薬

妊娠するとよく便秘するが、妊婦は下剤や浣腸はさけ、食事でコントロールするようにつとめる。冷たい牛乳の飲用などがすすめられる。
下剤や浣腸は早・流産の原因となることもある。甜緩下剤は、胃のX線検査でバリウムを飲み、それで便秘になった時にも用いられる。ふだんから便秘ぎみの人は、バリウムを飲んだ後で、すぐに緩下剤を服用しておくと、バリウム塊による閉塞を起こさないですむ。

浣腸は、本当に困った時だけに使うようにする。

便秘がちの人、胃腸の弱い人は、いろいろと胃腸薬と呼ばれているものを常用して、その副作用でますます胃腸の状態を悪くすることがある。

薬には連用すると悪い結果の出てくるものが多く、安心して常用できるものは少ない。ただし酵母製剤と呼ばれるものは、常用しても悪い副作用は認められない。
酵母は、ビール工場で麦芽を発酵させて作られるビールのカスの中に入っている。この成分には、ビタミン、アミノ酸、たんばく質、ミネラルなどを含んでいるばかりでなく、消化酵素のジアスターゼ、リパーゼ( 脂肪分解酵素)なども含まれており、消化を助け、食欲を増進し、便通をととのえる。
サプリメントの活用で腸の掃除(ビール酵母)

慢性胃炎

ほとんどの胃腸薬は連用しても薬効は低下しない

暴飲暴食が急性胃炎を起こすことは当然の結果。

しかし、これを繰り返しているうちに長い間の胃粘膜の刺激によって生じた胃腺の慢性的変化を慢性胃炎と呼ぶ。慢性胃炎には、急性胃炎のような、激しい症状はない。

なんとなくつねに胃が重苦しく、胃の存在が気にかかり、食欲不振におちいる。人によっては頭痛、めまい、肩こり、疲労感などを訴えることもある。
強い痛みがなくても、前記のような症状で悩んでいる人は、一度、胃のX線検査や胃内視鏡検査で病変の有無を確かめておくことをおすすめする。
慢性胃炎の成因については不明の点があり、明確な解答はない。

重曹そのものを単独で連用するのはよくない。胃酸過多症の人に、しばしば見受けられるのが、重曹をたくさん買い込んで、胸やけがはじまると、適当なサジ加減でこれを飲んでいる。

これは絶対にやめるべきである。胃液の酸度は、食物の消化にある程度は必要であり、これを多量のアルカリで急激に中和することは、消化の妨げとなり、胃の粘膜をあらす結果にもなるからだ。また重曹の中にはナトリウムが含まれているので、減塩食を実行している高血圧症の人には悪い結果をもたらすことになる。

素人療法は慎むべき。胃酸過多症には、さきに「急性胃炎」の項で述べた総合胃腸薬とともに、新キャベジンコーワコランチルAパンシロンG などが使われている。

胃の中の酸の少ない無・低酸症の時には、タケダ漢方胃腸薬A、ガロニン錠(全薬)、中外胃腸薬内服液、などの胃酸分泌促進剤、消化剤の配合された薬がよい。

胃の刺激となる食物であるアルコール、コーヒー、濃いお茶、胡椒、わさび、唐辛子、カレー、ごぼう、たけのこなどはすべて制限する。

ただし少量の香辛料、ワインは食欲増進のために用いてもよい。脂肪の摂取は、過剰になると、胃排出時間を長くして食べた物が長く胃の中にとどまることになるので制限する必要がある。

したがって消化の悪い脂肪成分の多いビフテキ、トンカツ、天ぶらなどはすすめられない。肉スープはガストリン分泌を促進して消化をよくするのですすめられる。

ガストリンは臓器ホルモンで胃粘膜から出て血液に入って胃腺に作用し、胃液の分泌を促進する作用を持っている。肉スープはこの作用が食品の中でもずば抜けて強い。

タバコは禁止する。タバコは、ニコチンそのほかの物質が唾液に溶けて胃に入り、直接的に胃粘膜を刺激して胃粘膜血流を低下させるとともに、胆汁の胃内への逆流を起こさせるためである。

低酸性胃炎の人は、摂取時間を規則正しく、一時にたくさん食べないようにする。また食後には休憩時間をとりたい。食品内容は少量で栄養価の高い、バランスのとれたものでなくてはならない。

でんぶん質、脂肪分は少なめに、たんばく質は白身の魚などからとる。牛肉、豚肉は脂肪分の少ないものを消化しやすいように調理して少なめにする。野菜は繊維のやわらかいものを選ぶ。

胃薬を症状のタイプに分けて原因を特定してから薬を選ぶ

神経性下痢

精神神経安定剤の服用でも治ることもある…が

腸は胃以上に人の感情を敏感に反映する。ビジネスマンはイライラによるストレスで下痢する人が多い。これを神経性下痢と呼んでいる。
この場合、腹痛と下痢を訴えるが、時には痛みがなくて下痢だけ続くこともある。腸自体にはなんら異常はなく、精神的ストレスから解放されると急に治ってしまうのが特徴である。

「精神神経安定剤」の服用でも治ることがある。
もっとも、最初から、その下痢が果たして神経性のものかどうかを判断するのはむずかしおいので、1日服用して効果がないような場合には医師の診断が必要となる。

神経性の下痢なら漢方薬半夏寫心湯(はんげしゃしんとう)がおすすめ。

神経性胃炎

自律神経を正常に戻す薬

コンピュータ技術者(SE)やOLなどでは、最近ストレスによる胃腸障害を起こす人が増加している。いわゆる胃神経症(神経性胃炎)である。

食欲がない、胃が痛い、げっぶが出るなどの自覚症状で胃の精密検査を受けても、別に異常は発見されない。けれども、あきらかに自覚症状がある。
胃カメラで異常がないのに胃痛や胃もたれに悩む日本人は多いがこれは消化酵素が不足しているから

その症状の強さは、患者の精神的動揺と並行している。胃症状とともに、不安感、疲労、手足の冷え、動惇、頭痛、肩コリの不快を訴える(不定愁訴)ことが多い。

このような症状は、心の病気による自律神経の失調が原因と考えられている。自律神経は、全身に分布し、消化器の働きも支配している。胃液の分泌、胆汁や膵液など消化液の分泌、さらに胃の運動なども、自律神経という生体のバランスをとる神経の指令のもとに働いている。

ところが自律神経が失調をきたすと、生体のバランスがくずれ、神経による指令が円滑に出なくなる。したがって消化活動も低下し、いろいろな症状があらわれる。

このような理由から、胃神経症には自律神経調整剤が有効である。この主成分は、ガンマオリザノールという米の胚芽から抽出された天然の物質で、各種のビタミン剤や、いわゆる強肝剤が配合されていて、間脳の機能の乱れを調整し、自律神経失調症に基づく諸症状の改善作用がある。

昔から漢方薬として使われているアカメガシワには整腸作用のあることが知られているが、そのアカメガシワエキスの主成分マロニゲンには、胃腸疾患の弛緩のために起こる症状にも、また反対に攣縮のために生ずる症状にも有効で、胃の過酸に対しても低酸に対しても有効であり、異常を正常に戻す作用が報告されている。アカメガシワ製剤には、イノバングリーンなどがあり、胃神経症に有効である。
神経症には「精神神経安定剤」をまず挙げることができるが、後述のごとく習慣性や服用量の増加の傾向が出てくることから、その服用には気をつけねばならない。

慢性腸炎

絶食すればほとんどの症状はおさまる

慢性腸炎は、急性腸炎の再発による腸の病変のくり返しで起こったり、急性腸炎を治しきらずに放置しておいたために移行する場合もある。

このほかに、腸内に寄生虫が住みついて腸粘膜に害を与えるために慢性的な炎症を起こす場合もある。慢性腸炎にかかると下腹部が張ったように感じ、時として痛みもあるが、一番やっかいなのは便通の異常である。

特に夜中とか早朝の下痢を訴えることが多い。これに対する治療としては、絶食するのがよい。1日絶食すれば大体止まる。絶食してもなお下痢が続く時には次に挙げる整腸剤を服用すると同時に、先に述べた消化性潰瘍の食餌療法を実行し、日常生活での無理な事柄、すなわち精神的肉体的ストレスを避けることも心掛けていただきたい。

整腸剤としては、新ビオフェルミンS新ラクトーンAヤクルト整腸薬などがある。いずれも乳酸菌製薬である。

乳酸菌は腸内の水素イオン濃度( ぜを正常に維持し、腸内細菌草の異常を改善する働きをもっている。腸内が正常な細菌叢になると、炎症も回復する。また乳酸菌製薬は連用しても副作用はない。安心して飲める。

急性腸炎

家庭薬として必ず常備しておきたい整腸剤

急性腸炎はいろいろな原因で起こるが、何といっても一番多いのは食中毒である。食中毒(食あたり)には、伝染型のものとそうでないものがある。

普通の食中毒の時には、食後しばらくして胃のふくれる感じや、腹痛、腹鳴があり、吐き気、水様の下痢がある。38~39度の発熱を伴うこともある

食中毒によって腸内異常発酵を起こすと、腸内細菌叢がアンバランスとなり、健康な時にには優勢であった乳酸菌が減少し、かわってアンモニア、インドール、スカトールなどの生体に有害な作用をもった物質を産生する腸内細菌が増加して、下痢ないしは下痢寸前の状態となる。
下痢 | 薬を使わない食事療法(病気・症状別)はこちら。

このような一時的な強い下痢には、水分の補給と同時に大腸内の殺菌、防腐の目的に製剤された整腸剤で昔から人気のある正露丸が効果がある。

正露丸は、腸内殺菌剤のクレオソートと腹痛や下痢を抑える成分を含む漢方剤が配合されていて、大腸内の異常細菌を抑える。正露丸と大体同じ成分であるが、服用しやすく糖衣錠にしたものがセイロガン糖衣である。家庭薬として常備しておくと子供の下痢や腹痛だという時に便利である。